2016年2月27日土曜日

スティーブ・ジョブズ




1984年のMacintosh、88年のNeXT Cube、98年のiMac

というジョブズの人生の中で最も波乱に満ちていた時期に
行なわれた3つの新作発表会にスポットを当て、
人々を魅了した伝説のプレゼンテーションの舞台裏を通し、
信念を貫き通そうとする姿や、
卓越したビジネスセンスを浮かび上がらせていく。
さらに娘リサとの確執と和解といったエピソードも盛り込み、
ジョブズの素顔を浮き彫りにする。映画.comより)

ダニー・ボイル監督の最新作で、
Appleの創始者スティーブ・ジョブズの映画
ということで見てきました。
よくある伝記もの、英雄伝を想定していたんですが、
それよりも「ジョブズ的」な人間の劇映画を
見ているような感じで新鮮な映画体験でした。
世界を決定的に変えてしまう人間は、
このぐらいクレイジーなんだろなーと思いつつも、
天才の孤高というよりか、
人間臭い部分がたくさん描かれていたので、
観客側が共感できる要素も多かったです。
ジョブズがいなければ、
iPodやiPhoneがない世界なのか、、
と物思いに耽ったりもしました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

Macのヒラギノフォントで日本語タイトルが出て、
映画が始まっていきます。
見終わった後に気づきましたが、
劇中ではタイトルが出ないんですね。(1)
難しい話ではあるけれど、
タイトル有無で余韻は違うと思うので、
日本語タイトルも良し悪しかと思います。
本作は1984年、1988年、1998年の
3つのパートで構成されています。
これらはすべてジョブズが記者会見で
新製品を発表した年で、
その中身は1984年のMac、1988年のNEXT、
1998年のiMacとなっています。
iPod、iPhoneを生み出した、
僕たち世代がイメージする輝かしい頃は一切描かれず、
彼がくすぶっている時代だった点がオモシロかったです。
しかも、ジョブズといえば、
プレゼンテーションが魅力的にも関わらず、
その部分は一切取り上げずに、
すべてのパートが記者会見直前のドタバタを描く、
文字通りの舞台裏という
思い切った作りであることにも驚きました。
さらに!この3つのパートが技術の進歩に沿っていて、
1984年は16mm、1988年は35mm、
1998年はデジタルといったニクい作りなんですよね〜(2)
このように映画の構造だけ取っても
オモシロイ要素がふんだんにあります。
中身としては会話劇の要素が強い作品で、
すべてのパートにおいてジョブズは出ずっぱりです。
彼を中心に様々な人間との関係を、
前述した経年変化で描いていくわけですが、
とにかくジョブズのクレイジーな完璧主義っぷりが強烈。
一切の妥協を許さないし、
自分の主義を人にも同等のレベルで要求していく感じは
上司だったら嫌かも。。。と思ってしまいました。
しかし、そのこだわりこそがApple製品の持つ、
美しさの源でもあるから彼は偉大な存在となり得た訳です。
そんなジョブズを演じるのがマイケル・ファスベンダー
正直見るまでは何故ファスベンダーと思っていましたが、
それは杞憂でベシャリが立ってしょうがない感じが最高最高!
本人はクリスチャン・ベールがいいんじゃない?
と言っていたみたいですが …(3)
経営者、発明家としての物語と家族物語が
2軸で進んでいきます。
いずれの軸においても孤立を深めていく様が切なかったです。
彼は己の哲学に合わないことは決して認めないんですが、
これは自分を守る為の処世術の1つなのか、
本気で自分のことを信じきっているのか、
その辺りは考えさせられました。
経営者、発明家パートでは
Mac失敗→Apple追放→iMacで復活という流れなんですが、
ジョブズvsウォズニアック、スカリーにおける
Apple製品を巡るバトルがとても興味深かったです。
ウォズニアックをセス・ローゲンが演じているんですが、
こんな真面目な役は初めて見ました。
また彼とジョブズの違いの例えとして、
オーケストラの話があるんですが、
コントロール/ 被コントロール、企画/実行など、
仕事をする上で得意なことがそれぞれ異なるとはいえ、
技術者側はイラッとするような話でした。
スカリーは1988年のパートがたまんなかったですね。
徐々に怒りがたまっていき爆発する様子に迫力がありました。
そして、もう1つが家族の物語。
彼には認知していない娘がいたらしく、
その母親&娘とジョブズの関係を描いていきます。
とくに娘が重要な役目を担っていて、
本作の特徴であるジョブズの「人間らしさ」を
取り戻せる唯一の存在になっています。
文句、不平は言うけれど、
やっぱり大事に思っているんですよという展開は
ありきたりと思われるかもしれませんが、
それまでのジョブズの言動が
あまりにも酷すぎるがゆえに、
ちょっとの前進でも大きく見える作りになっていました。
ここまで色々書いてきましたが、
wikiIMDbを読む限り、エピソードのいくつかは
真偽のほどは分からないものや、
明らかにフィクションの部分もあるようです。
ただ人間のエゴであったり、
それに付随した他人との関係構築について、
これほど考えさせられる映画になっているのは、
ジョブズというキャラクターが持つ魅力ゆえだと思うので、
事実と異なっていようが、あまり問題ないと感じました。
これからもApple製品のお世話になりそうな気がするので、
伝記も読んでおきたいところです。

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