2016年2月14日日曜日

キャロル



52年、冬。ジャーナリストを夢見て
マンハッタンにやって来たテレーズは、
クリスマスシーズンのデパートで
玩具販売員のアルバイトをしていた。
彼女にはリチャードという恋人がいたが、
なかなか結婚に踏み切れずにいる。
ある日テレーズは、デパートに娘へのプレゼントを
探しに来たエレガントでミステリアスな女性キャロルに
ひと目で心を奪われてしまう。
それ以来、2人は会うようになり、
テレーズはキャロルが夫と離婚訴訟中であることを知る。
生まれて初めて本当の恋をしていると実感するテレーズは、
キャロルから車での小旅行に誘われ、ともに旅立つが……。
映画.comより)

アカデミー賞最有力との声を聞きつけ見ました。
21世紀の作品とは思えないクラシカルな佇まいは、
「これぞアメリカの映画!」
という実感がある重厚な作品でした。
このタイプの映画って 画は素晴らしいけれど、
ストーリーが退屈だったり、
乗り切れなかったりすることが多いんですが、
恋愛要素とその当時の社会状況が結びついているため、
興味深く見ることができました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

冒頭のショットが印象的な映画で、
下水道の排水溝を背景にタイトル、クレジットが
ゴシックなフォントで登場。
そこからワンショットの長回しで
男性を追いかける形でNYの街を映し出し、
そのまま主人公のキャロルとテレーズが
食事をしている場面へと移っていきます。
この時点では単に女性2人が
食事しているだけのように見えるんですが、
本作はここに至るまでの経緯を描いた作品なので、
関係性を知ったあとに見ると
切なさの込み上げ方が半端なかったです。
本作で何よりも印象に残っているのは、
そのショットの力強さです。
凛とした佇まいとでも言いましょうか。
セリフなしでずっと見ていたいと思うくらい。
このクラシカルなショットの数々は
「フィルムで撮っているから」という
単純な理由だけではないことは明らかです。
とにかく視線のやり取りの描き方が素晴らしいと思います。
冒頭然り、はじめて2人が出会うシーン然り、
関係性を互いの視線で感じさせる訳です。
さらに印象的に使われているのが「窓」だと思います。
お互いのことを窓越しに眺めているシーンが多いんですね。
1950年代の女性同士の恋愛のタブー性を
演出でも見せていくのが良いなーと感じました。
主演の2人の演技も本当に最高でしたねー
ケイト・ブランシェットは
ブルージャスミンで最高に情けない
アクトを見せてくれた訳ですが、
本作では一転凛とした強い女性を演じ切っていました。
その彼女に憧れを含めた恋心を抱く、
ルーニー・マーラが死ぬほど可愛くてねぇ。。
2人とも男性の恋人や配偶者がいる中での
許されざる恋に焦がれてる感じがたまらない訳です。
ラブシーンもあるんですが、
ここがまた美しいシーンでした。
アデル、ブルーは熱い色では
超激しいラブシーンがありましたが、
それとはまた異なるエロティックさと言いましょうか。
なんせルーニー・マーラが脱いじゃうんですから。
日本の俳優で言えば、大竹しのぶと石原さとみの
ラブシーンって感じかな?
愛の逃避行を続けていた2人ですが、
その仲を引き裂くのは世間の目と社会システム。
かけがえのない子ども or 自分の愛した人?
という究極の選択をキャロルは迫られてしまいます。
一旦は「世間的な常識」に迎合するんですが、
そこから自らのidentityを取り戻すくだりは
かなりグッときましたねー
大切なものを失ってしまえば、
自分が自分で無くなってしまうということは
身につまされる話でした。
一方、振り回されてしまったテレーズは
一旦はキャロルのことを忘れ仕事に没入するものの、
彼女のことを忘れられません。
その大切さに気づくのがパーティーでの
所在なさというのも好きな部分でした。
エンディングは冒頭のシーンの視点を
変更して描いていきます。
前述したとおり、同じ場面にも関わらず、
2人の立場を知っているがゆえに
あぁ、運命って残酷…と心底思う訳なんですねー
そして視線の交わりでラストを迎えるという
一貫したカッコよさが素晴らしかったです。

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