2016年2月10日水曜日

オデッセイ



火星での有人探査の最中、嵐に巻き込まれてしまったワトニー。

仲間たちは緊急事態を脱するため、
死亡したと推測されるワトニーを置いて探査船を発進させ、
火星を去ってしまう。しかし、奇跡的に死を免れていたワトニーは、
酸素は少なく、水も通信手段もなく、
食料は31日分という絶望的環境で、
4年後に次の探査船が火星にやってくるまで生き延びようと、
あらゆる手段を尽くしていく。
映画.comより)

上半期一番の話題作といってもよい作品。
予告編は何度も見ていて、
スペース・サバイバル系かーと思っていたんですが、
物語のトーンがめちゃ明るくて驚きました。
最近でいえばゼロ・グラヴィティ
インターステラーといった割と重厚な作品が多い中で、
これはかなり異質な作品だと思います。
(言うなればMARVELにおける、
ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーな立ち位置かな?)
ストーリーの面白さは勿論のこと、
僕は本作が伝えているメッセージに心底感動しました。
残酷な自然(現実)を孤独に生きるすべての人々に対して、
科学(頭脳)で生きていける、死ぬだなんてとんでもない!と。
監督のリドリースコットの弟である、
トニー・スコットが自殺で亡くなったことを考えると、
余計に響くような作りかなと思います。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

主人公のワトニーを演じるのはマット・デイモン。
あらすじにもあるように事故で、
彼が1人火星に取り残されたのち、
どうやって生き延びていくかを見守る映画です。
火星でのサンプル採取のシーンから始まり、
嵐が巻き起こり彼だけがはぐれてしまいます。
本作はNASAの全面バックアップで作られているんですが、(1)
唯一決定的に正確さに欠ける点がこの嵐のシーンとのこと。(2)
どういうことかといえば、
火星の気圧は地球の0.6%ほどであるために、
たとえ嵐が来ようとも体感としてはそよ風レベルでしかなく、
ロケットは倒されたりしません。ということみたいです。
正直SF見るときの科学考証はもはやオマケでしかなく、
明らかに嘘じゃん!ってことがなければ、
僕はALL OK!!だと思っています。
ちなみに本作の脚本がOrionという宇宙船に乗って、
2014年に宇宙空間へ放たれたそうです。。なんか夢がある!(3)





1人残されたワトニーは
うわぁー!!とバカな日本映画のように
叫び喚くわけでもなく淡々と生き残る計画を立てていきます。
前半は科学の力、人間の頭脳の力を描いていくんですが、
ここが理系人間にはたまらない作りになっていました。
人間が生きていくために絶対に必要な食料と水を
自ら生み出していく訳ですが、
何もない火星で一体どうやって?と思うんですが、
極めてリアリスティックなのが超良かったです。
食料は配給のジャガイモの一部を
火星の土×肥料としての人糞で室内栽培するし、
水は燃料に含まれるヒドラジンに対して、
インジウムを触媒として分解反応を起こし、
水素を取り出して酸素と反応させるというねー(4)
(ちなみに今日の朝食はジャガイモに
HEINTZのケチャップかけたやつ!)
科学を使って巧みにサバイブしていく姿が
逐一かっこ良いんです!
世界の1つ1つには原理原則が存在し、
それらに従えば火星でも生き残れちゃう、
そんな逞しすぎる姿に胸を打たれてしまいました。
そして、本作を語る上で欠かせないのが音楽。
SFものといえば重厚なオーケストラとか、
シンセを使ったサウンドなどの音楽を想起しますよね。
本作では上記に加えて80年代のディスコミュージックが
大きくフィーチャーされています。
設定としてはジェシカ・チャステイン演じる船長が
持ち込んだ私物となっているんですが、
歌詞と物語がリンクした内容になっているのが
興味深かったですし、本作でもDavid Bowieが使われていました。
(Life On Mars ではなくStar Manでしたが…)
使われた楽曲のプレイリストはこちら→リンク
どの曲も近年のブギー、ディスコ再評価とは
異なる流れというか、超ベタな曲しか流れないのも
逆にフレッシュでオモシロかったです。
後半はいかにして火星からワトニーを救うか、
そこにフォーカスしていきます。
手始めである通信手段のシークエンスも
温故知新とKUFU(16進法!)の組み合わせが絶妙で最高最高!
途中でワトニーをある悲劇が襲うんですが、
そこで放たれる渾身のFUCK!!も好きなシーンです。
科学で火星という自然をコントロールしてきたのに、
唯一の事故が致命傷っていうねー
すべてが思い通りにはいかないけれど、
知恵を振り絞り続けて前に進むしかないわけです。
彼がなんとか生きようとする姿勢に
はじめは死んだことにしていたNASA側も感化され、
彼らの英知を集結させて何とかワトニーを
助け出そうと皆で知恵を出し合います。
ここで重要な役目を担うのが、
ラッパーChildish Gambinoこと
ドナルド・グローバー演じるリッチ。
最高に無礼な天才を見事に演じていて、
第2のウィル・スミスの可能性もゼロじゃないかも。。
と思ったりしました。(アルバム早く出して欲しいけど)
中国が決定的な役目を率先して行う点は
確かに露骨すぎる点もありますが、
1人の男を火星から救うという
プロジェクトのもと協力するなんて、
どこかの国みたいに火に油そそぐより、
よっぽどイイ話やんと思います。
最後はクルーによる救出大作戦が行われます。
マイケル・ペーニャの安定感、
ジェシカ・チャステインの姉御感がオモシロかったし、
Like アイアンマンな助かり方もナイスでしたね〜
そして地上に戻ってきた彼が
講師として語る内容に映画の大切なエッセンスが
すべて詰まっているラストで大団円!
本作は人類が火星に行けるようになるまで、
エバーグリーンな名作として語り継がれることでしょう。

0 件のコメント: