2016年3月30日水曜日

夢のカケラ CHEMISTRY 完全ドキュメント



日本のR&Bをこよなく愛す後輩がいるんですが、

彼のために…と軽い気持ちでbook offにてSalvage。
長らく積んでいたんですが、
寝る前に少しずつ読もうと思い手に取ったところ、
これがめちゃくちゃオモシロくて、
1日で読み切ってしまいました。
本作はASAYANというTV番組で開催された
男性ボーカルオーディションについて、
当時審査員を務めていたKCこと松尾潔氏が
その舞台裏を綴ったドキュメントです。
僕も当時リアルタイムで番組を見ていて、
このオーデイションのことはよく覚えています。
音楽に興味を持ち始めていたとはいえ、
中学生だった僕は単純にTV上のリアリティショーとして、
この番組を見ていました。
一方、本作は審査員であり、
日本屈指のプロデューサーである松尾潔の視点から見た
音楽的見地からオーディションの状況が
つぶさに書かれています。
当時読むよりも今読むとより一層オモシロいのは、
このオーディションが生み出したのは、
Chemistryという歴史に残るボーカルデュオだけではなく、
ATUSHI、NETHMITHという
現状日本最高峰のエンターティメント集団である、
EXILEに所属する2人も登場しているからです。
2人での活動を休止しているChemistry、
かたや規模としてジャニーズを超えるかもしれない
男性グループ集団となりつつあるEXILE TRIBE。
それぞれの栄枯盛衰があまりにも香ばしすぎる訳です!
本作内でも言及されていますが、
Chemistryのデビューシングル「Pieces of A Dream 」は
ジャニーズ以外の男性ボーカルグループで
21年ぶりのオリコン1位という快挙を成し遂げ、
また、現状のEXILEの活躍っぷりを見れば、
本格派の男性ボーカル曲が世間に馴染むことになったのは、
すべてはこのオーディションから始まったと
言っていいのかもしれません。
(EXILEのレコード大賞受賞曲であるTi Amoは
松尾潔プロデュース!!)

本作でオモシロかったのは松尾潔氏の文章の巧みさと、

その巧みさで描く音楽をビジネスとすることの悲喜交々。
音楽業界を目指す若者5人の運命を、
いくつかのファクターで取捨選択していき、
1通りの歴史が紡がれていく。
結果は堂珍・川畑だと知っているんだけど、
その過程を今読むと興味深かったです。
とくに観客至上主義の良し悪しについては、
インターネットによる可視化が進む中、
色んなところで様々な意見がありますが、
少なくともエンターティメントは
観客に迎合しすぎると長期的に見れば
損をしてしまうように僕は考えています。
このオーディションは2000年初頭ですが、
ネット、リアルの両方でアンケートを取っていて、
その結果を細かく研究しているようでした。
つまり、単純に歌がうまいだけではなく、
マーケティングの観点からも
念密に検討されていたことが伺い知れました。
もし観客至上主義で選んでいれば、
堂珍・佐藤(ATSUSHI)で決定していた訳ですが、
実際にはATSUSHIが最初に落とされる酷い現実。
しかし、今となっては最良の選択だったように見えるんだから、
人生は何が起こるか分からないとシミジミ。
ちなみにATSUSHIに関しては、オモシロい記述があったので、
そのまま文章を引用します。さすがに笑いました。

佐藤だけは音楽の場に私情を持ち込まなかった。

80年代から90年代にかけて大活躍した
セクシーなラッパー<ビッグ・ダディ・ケイン>の
レパートリーに「スムーズ・オペレイター」という名曲がある。
〜中略〜
僕は佐藤の性格とそのヒップホップ的なファッションから、
ひそかにこの曲を彼のテーマソングと決め、
自分の頭の中で鳴らしていたものだ。



松尾潔氏は音楽ライターが出自であるため、

いわゆるソウルの定番ナンバーでTV用とは思えないチョイス。
Apple Musicでプレイリスト作ったので、
興味ある人は聞いてみてください→リンク
あと当時のオーディションのリッチさもポイント。
TVの企画として約1年にわたって、
選択の過程を見せる時間のリッチさが懐かしくて、
今の情報化社会でここまで時間かけて
見せてもらえるコンテンツは少なくなっているよなぁと。
最終決定前のアトランタへの旅では
アレステッド・デヴェロップメントのスピーチのお宅訪問、
歌を披露するなんていうリッチさにも驚きました。
Chemistry以外のユニット名の候補も記載があって、
今となっては、それらがあまりにダサすぎて
本当にChemistryで良かったなと思いました。
今年は結成15周年だそうなので、
何か動きがあるかもしれないので注目していきたいですし、
過去音源もこれからじっくり聞いていきたいと思います。





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