発売当時に買ったんですが、
読むのを後回しにしてまって今になりました…
というのも佐々木さんの作品は論説、小説を含め、
それなりに読んできているんですが、
小説の文体にかなり抵抗があったからです。
しかし、最近の小説はかなり読みやすくなってきいて、
前作の短夜明かしはかなり好きな作品でした。
本作は神道の話で2人の女性とのエピソードから、
日本における神の存在、信仰を描いたものです。
タイトルの「神奈備」は、
上代、神霊の鎮座すると信じられた山や森のことです。
主人公は2人の女性のことが好きになり、
タイミングは異なるものの、
両方の女性と神奈備である奈良の三輪山を訪れます。
佐々木さんはいつも通りの調子で、
独特の文体と艶やかな表現で、
その風景を丁寧に描写していきます。
僕が描写として好きだったのは瞳を見つめる表現。
人の瞳をそこまで細かく見たことがないけれど、
擬音を交えた表現がしっくりきました。
2人の女性は対象的な存在で、
最初に登場する美由は盲目的に神の存在を信じている、
いわゆるパワースポットが大好きな女性。
神があなたを呼んでいるとか、
前世は2人は強い繋がりがあったとか。
僕が一番嫌いなタイプの女性なんですが、
そのカウンターとなるのが 後半に出てくる彩。
彼女は大学の日本史学科の博士課程で勉強していて、
日本における神への信仰に対して、
明晰な論考を披露していきます。
彩が佐々木さんの見解を代弁しているんだろうけど、
京都弁の話し言葉で書かれているので、
するすると読めて勉強になりました。
(本作を読むまで寺と神社の違いも
はっきり理解していないレベルでした。。)
近年ナショナリズムの機運が高まる中、
「日本伝統の」とか「日本古来の」といった
言葉をよく耳にするようになりましたが、
ゼロから生まれた日本のオリジナリティは幻想で、
あくまで近隣諸国とミックスアップされて
形成された世界なのである。
という態度には心底納得しました。
坂口安吾論が最近出たようなので、
そちらも早く読みたいと思います。
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