2017年3月4日土曜日

バンコクナイツ



<あらすじ>
バンコクにある日本人専門の歓楽街タニヤ通り。
タイの東北地方イサーンから出稼ぎに来て5年になるラックは、
現在は人気店「人魚」のトップにのぼりつめ、
ヒモの日本人男性ピンを連れ回し
贅沢な生活を送る一方で、
故郷の家族に仕送りをしていた。
ある晩、ラックはかつての恋人である
元自衛隊員オザワと5年ぶりに再会する。
ラックとオザワはそれぞれの思いを
胸に秘めながらバンコクを離れ、
ラオスとの国境にあるラックの故郷へ向かうが…
映画.comより)

サウダーヂを手掛けた映像制作集団空族最新作。
スタジオ石が撮影を担当していることもあったし、
VIDEOTAPEMUSIC×sakamoto shintaroの
サントラ12inchも購入していたので楽しみにしてました。
サウダーヂの世界がさらに拡大したような内容で、
グローバリゼーションの空気を感じる映画体験でした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

上映時間は約3時間と比較的長めなんですが、
体感時間はそこまで長くなかったです。
詰め込み系の映画でもなく、
この体感時間の短さはなんなのかなーと思いましたが、
僕は登場人物たちへの興味の持続によるのかなと
見終わった後に感じました。
とくに主人公のラックが本作最大の魅力。
彼女の一挙手一投足が見逃せない。
それは見た目の美しさもありますが、
もともと地方の子が出稼ぎで都会にやってきて。
そこで体はって金を稼ぎ家族に仕送りするという、
サバイブする姿がとてもたくましいからだと思います。
バンコクのタニヤという歓楽街が舞台なんですが、
日本の場末のスナック街に見えて既視感が凄い。
そこのメインの客は日本人で、
キャバクラで働く彼女たちも日本語を話す。
海外で日本人が商売でターゲットになるというのは、
見聞きしたことはあるけれど、
実際に映像で見るとインパクトが強かったです。
とくにキャバクラのシーンはどれも強烈で、
大量の女の子が待機している状態で、
そこから選ぶというダイレクトなシステムだったり、
中島美嘉「雪の華」のカラオケのシュールさなど、
知らない世界を覗き見る楽しみがありました。
さらにタイ語で話す際の字幕が山梨弁!
(東京ポッド許可局で話題になった
「て」も出てきて個人的にテンション上がった)
海外映画の字幕で日本語の方言を使って、
ニュアンス、ノリを伝えるっていうのは、
フレッシュだなーと思いました。
あとバンコクの夜の街の美しさも素晴らしくて、
夜がかっこよく、美しく見えるだけで
僕はそこに映画の価値があると思っているので。
スタジオ石さすが!の仕事だと思います。
もう1人の主人公である
ラックの恋人であるオザワを演じるのは冨田克之監督。
彼以外の日本人の登場人物がバンコクで暗躍する、
悪そうな男たちばかりで、
彼の朴訥なスタンスがグッとくるし、
真面目なんだろうなというのが伝わってくる。
中盤、オザワとラックのロードームービーになるんですが、
ここはバンコクと打って変わってザ・田舎で、
ラックが故郷に抱える苦悩を描きます。
とくにお母さんのシーンが強烈で、
とてつもなく大きい家でシャブやってて、
やたらとコーラ飲むっていう。。
一方のオザワはラックの田舎に魅了される。
都会で疲弊して地方に魅了される感覚って、
共感できるなーと思いつつ、
それはたまに行くからだよなと思い返したり。
村社会にいきなり入れないことが
ラックの家族を見ているとよく分かる作りでした。
オザワは単身ラオスへビジネスのために行くんですが、
そこで遭遇するのが地元のギャング集団で、
ヘッドを務めるのはラッパーの田我流!
このシーンが本当にとてつもなかった!
ベトナム戦争がフラッシュバックするようなシーンは
そこまで少しずつ織り交ぜられてたんですが、
強烈な爆発音とベトナム戦争の爆撃の跡を
空撮で押さえたショットが超絶カッコよかった!
(爆発音なのに音が割れていない処理に感動!)
空族の映画は軒並み未ソフト化で映画館でしか見れないんですが、
この体験は映画館でしか味わえないなーと納得。
他のstillichimiyaの面々もカメオ出演しているのも楽しくて、
ラックにどつかれるMr.麿が個人的にはアツかったです。
本作って結局なんだったっけ?という夢のような部分と、
強烈にリアリスティックな部分が
最高のバランスで結晶化している作品だと思います。
それは都会と地方と言い換えてもいいのかもしれません。
本作のバンコクの風景を見ると、
画一化していく世界を目撃することになるし、
それに対して抗う空族の映画は今の時代にこそ響く。

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