2017年3月19日日曜日

逆行



<あらすじ>
ラオスでNGOの医療ボランティア活動に
従事するジョン・レイクは
上司から2週間の休暇を取るように勧告され、
激務により疲弊した体を休めるために
南部のリゾート地コーン島にやってきた。
宿でくつろぎ、夜には近くのバーでバーテンダーと意気投合し、
ウィスキーを飲んで酩酊したジョンは宿へ帰る途中で
地元の娘が若いオーストラリア人観光客に
暴行を受ける現場に遭遇する。
加害男性に詰め寄ったジョンは男から殴られたことで
理性を失い、相手を何度も殴り返し、
男を死なせてしまう。
翌朝、自分のしたことに恐ろしくなったジョンは、
事件捜査中の警察から逃走してしまう。
映画.comより)

僕の好きな数多くの日本の映画監督が
コメントを寄せていたので見てみました。
(コメントはここで見れます→リンク
監督であるジェイミー・M・ダグは
本作が長編デビュー作とのことですが、
善悪の彼岸を彷徨うストレンジャーって感じで、
とてもオモシロかったです。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

舞台はラオスで主人公は
国境なき医師団のようなNGOで働く医師。
映画の冒頭で繰り広げられるのは
ERさながらの救命治療シーンでした。
設備も人手も不足している状況で、
何とか1つでも命を救いたいという、
志の高い姿勢がスクリーンを通じて伝わってくる。
(ギョッとするゴア描写も良かった)
誰がどう見たって明らかに善側にいる、
そんな彼が悪へと巻き込まれていく様が、
あまりに不憫だけどオモシロいんですよねぇ。
映画の基本構造である「行って帰る」ことに
非常に忠実な作りになっていて、
最初のバカンスへ行く過程が丁寧に描かれることで、
主人公が災難に巻き込まれ、
そこからエスケープする際の過酷さが
より伝わってくる仕掛けになっていました。
コーン島ってところでバカンスを過ごすんですが、
それがすげー優雅。ハンモックに寝そべって本読んで、
酒飲んで、宿の目の前の綺麗な川で泳いで。
あんな休暇取りたいものよ…と羨ましい気持ちになりました。
そして夜はローカルなバーで飲み倒す、
そこまでは完璧な休暇なんだけど、
バーで遭遇したオーストラリア人が悪夢の始まり。
ここの見せ方が個人的にニクいと思っていて、
女の子たちを心配してというのが建前で、
俺が狙っていた女の子たちを横取りしやがって!
というニュアンスが含まれているかなーと。
あの座席の配置はそうに違いない!(あくまで個人的見解)
そして、あらすじにあるように男を殺してしまうんですが、
ここの見せ方が抜群!
いきなり部屋に戻ってきたショットになって、
さっきまで最高の休暇を過ごしご危険だった彼が
挙動不審でシャワーを浴び始めると傷だらけになっている。
虚をつかれたのも束の間、手持ちカメラのグラグラの
ショットの連続で息をつかせぬまま、
事態がどんどんと進行していくところが圧巻でした。
財布を殺害現場に取りに戻るという
どんくさい行為なのに恐ろしくカッコいい!躍動感!
後半はバレる/バレないサスペンスが展開。
ハラハラもするんだけど、情けなさが勝つ場面も多く、
ちょっと笑いそうになったりする。
とくに船でエスケープするくだりは、
言葉通じない異国あるあるがオモシロかったです。
命からがら自分の診療所まで戻って来ても、
警察はすでに先回りしていて万事休すかと思いきや、
仕事仲間がラオスからタイへの亡命を
斡旋してくれることに。
メコン川渡れと言われたときの
「おいマジかよ…」という表情が素晴らしかったです。
結局タイで捕まってしまい刑務所へ送られる。
ここからラストの展開が本作最大の見所。
それは邦題にも現れている訳ですが、
自分に嘘ついて生きていくのか、
すべてを清算するのか、究極の選択。
正直、動機付けが少し弱いかなーと思ったけど、
この人はあくまで善の人なんだと
冒頭のシーンを思い出して納得。
上映時間のタイトさもちょうどいいし、
最後のタイトルどーんも気持ちよかったです。
バンコクナイツとあわせて見ると
味わい倍増だと思います。

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