2017年3月7日火曜日

八月の路上に捨てる

八月の路上に捨てる (文春文庫)

最近、ノンフィクションばっかり読んでいるので、
ここらで軽く小説でも挟もうと思って読みました。
伊藤たかみという人の作品で、
タイトル作で芥川賞を受賞しています。
3つの話が収録されていましたが、
どれも夫婦を描いた作品でオモシロかったです。
タイトル作を読んで思い出したのは、
現在話題沸騰中のカルテットも手掛けている、
坂元裕二が手掛けた最高の離婚というドラマ。
主人公の職業が自動販売機の管理だし、
離婚にまつわる話だし、っていうだけなんですが…
夫婦間の生々しい離婚に至るまでの過程が、
克明に刻まれていて胸が痛くなりました。
あともう1つ思い出したのはラ・ラ・ランド。
ラ・ラ・ランドでは恋を追うのではなく、
夢を追うことを肯定していた訳ですが、
本作では同じ様に恋愛(結婚)と夢を追うことを
並行して描いているんですが、
夢を追うことの残酷さにフォーカスしていました。
僕が震えたのは、奥さんがアナウンサーの教材を
ある日突然買ってきてアナウンスの練習を始める描写。
もはや軽いホラーの領域なんですが、
自分の存在意義を確かめることって必要だし、
他人事とは思えないなーと。
津村記久子さんが解説を担当しているんですが、
主人公の職業からの語り口がめちゃ素晴らしかった!
グッときたラインを引用しておきます。

仕事も結婚生活も、それがどれだけ世間に対して、
不可視的で、不成功なものに終わったとしても、
携わる人々は常に本気であり、
誰にもそれを否定する権利はないのだ。

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