2017年7月25日火曜日

すばらしい墜落

すばらしい墜落

先日、本をまとめ買いしたときに
丸くまとまってしまったので、
ジャケ買いしてみました。
アメリカ在住の中国人作家といえば、
イー・ユンリーがいますが、
彼女ほどではないにせよ、
異国の地で暮らす豊かさ、辛さが
伝わってくる作品でした。
本作は短編集で全エピソードが
NYのフラッシングという
チャイナタウンが舞台となっています。
一口にチャイナタウンといっても
短編それぞれの主人公には
色んな階層の人がいてゴリゴリのビジネスマンや
VISAが切れて不法滞在となっている人まで。
それぞれのNYでの生活における
悩みを描いています。
お金持ちだから悩みがないわけでもなく、
お金の周りにいる家族との関係にフォーカス。
一方でお金のない人はより差し迫った悩みで
苦しんでいる様子が生々しい。
1話目の「インターネットの呪縛」からして
いきなりオモシロくて、
NYで自立しようと懸命に働いているのに
中国に住む妹にお金をせびられるんですが、
昔ならこんなことはなかったと悔しがる。
つまり、インターネットの登場による
急激に加速したコミュニケーションの話。
日本だとLINEが主流になっていて、
僕はすっかり疲弊気味なんですが、
この話を読んで少しほっこりしました。
海外文学だと文化の背景知ってないと
分からない部分があったりしますが、
かなり普遍的な話ばかりだし、
日本語訳もかなり流暢で読みやすかったです。
また、作者が前向きなのか、
鬱屈した形で話が終わることはなく、
オチがきっちり用意されているので、
落語のようにも感じました。
僕が一番好きだったのは「英文科教授」
大学での終身在職権を得るための
レポートを大学に提出するんだけど、
そこに決定的な間違いがあって、
「もう終わった…」と絶望しながら、
それでも生きていくことを模索する話。
致命的なミスをして、それがバレる/バレないで、
ハラハラすることってあると思うんですが、
結果的に杞憂だったときの
異常なまでの安心感が鮮やかに書かれていて好きでした。
寝る前に1話ずつ読むのがいいかも。

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