2017年7月15日土曜日

漁港の肉子ちゃん

漁港の肉子ちゃん (幻冬舎文庫)

西加奈子作品を少しずつ読み進めているんですが、
以前から友人にプッシュされていた作品。
やっと読んだのですが、とても素晴らしかったです。
圧倒的な生と性の肯定というか、
後期の西加奈子作品に共通するエモーショナルが
炸裂しまくりで電車で泣いてしまった…
舞台は日本海の田舎町で、そこに住む母子家庭が主人公。
お母さんがタイトルにもなっている肉子ちゃん。
大阪弁ばりばりで、
人を疑うことを知らず、常に信じ続けてきた女性。
そんな性格ゆえに借金を背負わされたりして、
傍から見ると辛い人生を歩んでいるように見えるけれど、
彼女は「生きてるからそれでええやん」という、
矜持を持って生きている姿がとにかくカッコいい。
普段生活していると、
Goodになる瞬間とBadになる瞬間の繰り返しだけど、
肉子ちゃんは目の前の生活をとにかく楽しんでいて、
色々考え過ぎなんかなーと思ったりしました。
大阪弁がバリバリの表現として、
エクスクラメーションマークと「っ」の乱打が
こんなに破壊力を持つのか!
という新たな発見もあってオモシロかったですし、
この表現がラストのオチのフリにもなっているんだから、
西加奈子恐るべし!と言わずにいられない。
自意識が全く垣間見えない肉子ちゃんと
対照的なのが娘の喜久子で、彼女は無類の本好きで、
とても達観していて自分がどう見られるかを
気にして生きている。
こんな水と油のような親子関係の中にも、
生活の豊かさが伝わってくるのが好きなところでした。
それはお金だけではなく、
失われたと言われて久しい地域の繋がりが見れるところ。
(村社会っぷりにも言及しつつ)
なんといっても終盤、喜久子が入院してからが
本作最大の読みどころでしょう。
涙腺決壊してしまう圧倒的な生の肯定は
西加奈子節が本当に炸裂していて、
現役作家で間違いなくトップクラスの筆力。
前半から薄々感じていた肉子と喜久子の関係が
明らかになるところでは、
女性の性の話も絡めてきて構成が本当に巧みでした。
最新作のiも読まねば…!

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