2017年7月29日土曜日

往復書簡 初恋と不倫

往復書簡 初恋と不倫

坂元裕二という脚本家の作品。
過去に上演された朗読劇の脚本で、
「不倫の初恋、海老名SA」
「カラシニコフ不倫海峡」という
2作品が収められています。
すでに決定的なレビューが
とあるブログにアップされていて、
読み終わった人はこちらを読むことをオススメ!
坂元裕二『往復書簡 初恋と不倫』 - 青春ゾンビ

2作とも恋愛物語なんだけど、
不穏な空気がどちらも溢れている。
通底するのは他人の痛みは他人事ではないということ。
しかもそれを世界レベルのマクロな出来事から
一気に卑近なミクロの出来事へと
フォーカスを移動させるスキルが凄過ぎました…
(メキシコ麻薬戦争の引用はニヤニヤしてしまった)
タイトルにある「往復書簡」という文字どおり、
2作品とも手紙もしくはメールのやり取りのみが
書かれていて第三者による語りは無い。
他人の手紙、メールを盗み見しているような
感覚になるんだけど、そこに坂元節とも言うべき、
パンチラインの数々が炸裂していて、
それがたまらないんですよねー
セリフの畳み掛け方、言葉のチョイス、
目のつけどころのシャープさ。
笑わせるところもあれば、
人の心の奥の部分を鷲掴みにするところもある。
日常生活では想像しにくいタイプの会話なんだけど、
なぜかしっくりくる。言葉にできない感覚があります。
「不倫の初恋、海老名SA」では
登場人物同士がすれ違い続けるのがオモシロくて、
しかも、手紙とメールの扱いが巧み。
テキストによるコミュニケーションの
速度は飛躍的に加速している近年に読むと、
手紙だけではなくメールでさえ
レミニスな感情を引き起こされるんだから
世の流れは早いものよ…
本作を読んで感化されて
未見だった「それでも、生きてゆく」を
勢いでビンジ・ウォッチングしたんですが圧巻でした…
他の未見の作品も見たいところです。
最後に本作で僕が一番好きだったラインを引用しておきます。

きっと絶望って、ありえたかもしれない希望のことを
言うんだと思います。

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