2017年7月13日木曜日

茄子の輝き

茄子の輝き

滝口悠生最新作ということで
発売されてソッコーでゲットしました。
短編集なんですが、連作形式になっていて、
長編のように読むことができてオモシロかったです。
本作のテーマとなっているのが日記。
僕は去年ぐらいから日記文学への興味が増していて、
それを決定的にしたのが、
八本足の蝶、かなわないでした。
ネットで読めるものでいえば、
C.O.S.Aのこのポストも日記文学として超好きです。
Good bye Astoria

上記で挙げた作品、文章は筆者の実の日記なんですが、
本作は日記を書いている男が主人公で、
彼が自分の日記に基づいて過去といかに向き合い、
生活しているかについて描かれています。
過去への耽溺は未来志向の社会において、
ともすると嘲笑の対象になりかねないと思います。
実際、バブル自慢ばっかりしてくるおじさんとか、
速やかに消えて欲しいと思いますが、
本作でアプローチしているのはもっと別のところ。
あの頃は良かったなーというよりも
記憶の不確かさに極めて自覚的な男の日常における
思考過程を追っていくような内容。
なので、本当にたわいもないことばかりなんだけど、
これが滅法オモシロいんですよねー
1日生活している中で色んなものを
見たり、聞いたりして体験する中で、
こぼれていく記憶がたくさんあって、
実はそこに生活の豊かさがあるのではないか?
ということを読んでいる間に感じました。
バツイチで比較的不安定な仕事をしている主人公は
客観的に見れば不幸に見えるかもしれない。
けれど、そんなことに頓着することなく、
自分と向き合っている姿が眩しく見えました。
後半、前の奥さんへの思いがMADな形で
炸裂するシーンが個人的なハイライト。
過去、記憶の不確かさは
滝口さんがずっと描いてきたテーマだと思いますが、
それと日記の相性がとても良いです。
さらに、本作の出版のCPなのか、
滝口さんの日記が毎日公開されていました。
(手書きを写真で撮ったもの!)
こっちも無茶苦茶オモシロいので
興味ある人は読んでみてください。
日記の重要性は音楽の世界でもあって、
HAIMというLAのガールズロックバンドが
最近アルバム出して、それはそれは素晴らしいんですが、
Pitchforkのレビューでこんなことが書かれていました。

Stevie Nicks told Haim to keep diaries. [...]
“Do you guys keep a journal?” 
the eldest Haim, bassist/singer Este, said 
she keeps notes on her phone. 
(Alana, Danielle, and Este all write lyrics.)
 But Nicks extolled the virtues of paper: 
On the right-hand page, you recount your day; 
on the left-hand page, you poeticize it.
(Pitchfork)

紙の優位性を説きつつ、
右のページに実際の日記を書いて、
左にのページにその日記を詩にする
という使い方はオモシロいなーと思いました。
空前の日記ブームで自分でも少し書き始めました。
(手書きではないんですが。)
書き出すと楽しいんですが、
三日坊主にならないよう頑張りたいところです。

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