2017年10月28日土曜日

ゼロヴィル

ゼロヴィル

長年本を読む生活を続けていますが、
久々に震えるほどの圧倒的な読書体験でした。
主人公はシネフィルというレベルでは語りきれないほどの
映画に狂った男で帯の言葉を借りれば映画自閉症。
もし人間が生まれてからずっと映画のことだけ
考え続けていれば、こんな人間になるのかも?
という映画好きの心をくすぐる設定。
さらに彼は「陽のあたる場所」という映画に心酔するあまり、
頭の左右に主人公2人のタトゥーを左右に入れている。
(本の表紙の2人です)
彼がハリウッドにやってきて映画の仕事に携わり、
そこからどんどんステップアップしていく過程を描いています。
読んでいるときの感覚としては、
チャック・パラニュークのファイトクラブに
かなり近いものがあって。
本の世界に取り込まれるというか、
TVドラマに後ろ姿を見つけられなかったやつらの
神話を読んでいるような感覚がありました。©RHYMESTER
作品中で大量の映画が引用されていて、
それは見たことがない古典が多いんですが、
どれも無性に見たくなる作品ばかり。
しかも、ただ引用するだけではなくて、
物語内のシチュエーションに混ぜ込み、
有機的に物語と強く結びついていて、
推進力に繋がっているがゆえにスルスルと読める。
(安定の柴田元幸による翻訳)
登場する映画を知らないから読めないではなく、
知らない映画を見たくさせる力を持ちながら、
物語自体がめっちゃオモシロいというバランスの良さが
本当に最高だなーと思いました。
(巻末に映画の索引が付いているのも超便利!)
主人公はハリウッドに来て美術の仕事から始めて、
最終的に映画の編集者になります。
ここが凡百の小説だと監督のパターンが多いと思うんですが、
編集者というのが渋いし、
これもまた物語の構造と繋がっている。
本作はパラグラフが細かく別れていて番号がふられています。
それはまるでカットの断片を並べているかのようで、
つまり物語をブツ切りにして繋ぎ合わせる、
編集の仕事を表現しているんですなー
しかも、その番号がある瞬間から変化していく
仕掛けとタイトルの結びつきがもう。。最高最高!
登場する映画を見てから読み直したいし、
映画好きの友人すべてにオススメしたい1冊。

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