2017年10月28日土曜日

あゝ荒野 後篇



<あらすじ>

ボクシングのプロデビュー戦を終え、
トレーニングに励む毎日を送る新次とバリカン。
宿敵である裕二との対戦に闘志を燃やす新次は、
自分の父親の死にまつわる
バリカンとの宿命を知ってしまう。
一方、バリカンは図書館で出会った
京子に初めての恋をするが、
彼の孤独が満たされることはない。
やがてバリカンは自身の殻を打ち破るべく、
兄弟のように過ごしてきた
新次との日常を捨てることを決意。
戦うことでしか繋がることのできない
2人の死闘の日々がはじまる。
映画.comより)

前篇を見終わったあとに流れた予告編で

期待高まりまくりの中、見てきました。
文句をつけたくなるシーンも
いくつか散見されたのですが、
それらをすべて吹き飛ばす主演2人の演技力で、
僕は涙を流さずにはいられませんでした…

※ここからは盛大にネタバレして書きます。


後篇で描かれるのは主に2つで、

新次の復讐試合と新次と健二の試合。
復讐試合は前篇でフリがあったように、
自分の兄貴分を下半身不随に追い込んだ裕二との
因縁をリング上で清算するというもの。
憎しみを糧とし、憎んで憎んで憎み切ったものだけが
リング上の勝者なのであると考える、
新次の1つの到達点とも言えるのがこの試合。
この試合の痛みと苦みは凄まじかった。。。
あれだけの憎しみにさらされた、
僕を含め観客の多くが期待するのは
憎しみからの解放であり、明確なカタルシス、
勧善懲悪なストーリーなんだけど、
そんな簡単に解放してくれないんですね。
みっちりと作戦を練ってきた裕二が
序盤優勢なんだけども、反則行為を含めて
何度も挑発することでボクシングではない、
殴り合いへと展開していく。
裕二はボコボコにされるものの、
最後までダウンすることなく
判定で新次が勝利するんだけど、そこにカタルシスはない。
つまり、憎しみの果てには
何も待っていないということが露呈してしまうんですね。
当たり前と言われれば、それまでなんですけど、
あまりに痛々しく生々しいボクシングシーンがゆえに、
こちらの心にグサグサ刺さってきました。
そしてメインとなるのは新次と健二の試合。
そもそも前篇では2人は兄弟分として、
1つ屋根の下でトレーニングを積み、
仲良くプロボクサーになった訳ですが、
最終的には拳を交えることになる。
仲良かった2人が殴り合わざるを得ない系映画といえば、
クライング・フィストウォーリアーといった
個人的傑作が多いのですが、
それらの作品では殴り合わねばならない理由が
明快に示されていました。
ゆえに2人が争うまでの持って行き方に注目してたんですけど、
とても曖昧な形のままで、明確に示さないところが
日本の映画っぽいなーと初めは感じました。
健二の新次への愛(ラブの方ね)や
それぞれの父親が実は繋がっている因縁など、
要因として考えられることはいくつか見られました。
しかし、ラストのラストで、
そこをこれでもくらえな勢いで
ファジーであることの意味を回収していくんですよね。。
ボクシングの試合にリアリティがないという
意見があるかもしれませんが、
そんなリアリティ求めるならボクシング見とけって話で。
リアリティを超越したボクシングが描かれているからこそ、
この映画は輝いて見えるんだと思います。
そのビヨンドを可能にしたのが主演2人の演技でしょう。
後篇のヤン・イクチュンの切なさ、エモさは今年屈指。
そして、それを受け止める菅田将暉の度量。
互いが孤独を深めていった先にぶつかり合い、
すべてがパーフェクトにかみ合う最後の試合。
あの健二のモノローグで泣かないやつなんているのかよ!
腐った社会だとしても、自分がここで生きているんだ
ってあんな形で示されたら泣くに決まってるやろ!
少し熱っぽくなりましたが見てもらえれば分かると思います。
今回は前篇ほどサイドストーリーの時間がなく、
2人の時間が多くを占めていることも良かった。
そのサイドストーリーで前フリしていたことは
一応本編に絡んでくるんだけど、
結局蛇足にしか見えなかったです。
もともとU-NEXTの配信ドラマを映画化したそうで、
確かにドラマだと耐えれるけど、
映画だとあまりに冗長過ぎるなーと感じました。
(あと最後の試合で新次が意識トバしたときに
出てくる映像は本当に最悪なので消して欲しい。)
計300分5時間ある訳ですが、その時間を通過してこその
感動があると思うので見て欲しい作品です。

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