2017年10月21日土曜日

あゝ荒野 前篇



<あらすじ>
2021年の新宿。かつて親に捨てられた新次は、
兄貴分の劉輝を半身不随にした
元仲間・裕二への復讐を誓っていた。
ある日彼は、街でティッシュ配りをしていた吃音で
赤面対人恐怖症の「バリカン」こと健二と一緒に、
「片目」こと堀口からボクシングジムへ誘われる。
新次は復讐を果たすため、バリカンは内気な自分を変えるため、
それぞれの思いを胸にトレーニングに励む2人。
徐々に名を挙げていく新次に対し、
バリカンは特別な感情を抱くようになっていく。
そんな中、新次はついに裕二との戦いに臨むことになり…
映画.comより)

菅田将暉×ヤン・イクチュン!
という最高の組み合わせを
新宿ピカデリーで見かけたときから
ずっと楽しみにしていた作品。
前篇で150分、後篇で150分という
特大ボリュームの作品なんですが、
前篇の段階でもかなりオモシロかったです。
日韓を代表する2人の俳優のコンビネーションは
凡百の邦画群を蹴散らさんばかりの勢いでした。
上映終了後の後篇の予告も滾りまくりで
今から楽しみで仕方ないです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

もともと寺山修司の小説が原作。
未読なのでどこまで沿っているか分かりませんが、
かなり現代的にアップデートされていると思います。
舞台となるのは2021年の新宿。
2020年までに山積みする問題が
すべて解決するかの如く振る舞っている
政権与党をあざ笑うかの如く、
高齢化社会、安全保障等の現状の問題が
顕在化している社会を描いている点に好感を持ちました。
しかも、新宿を実際にロケ地としていて、
2021年になっても変わらない街並がそこにある。
(ただしラブホが老人ホームになるとか、
中身は変わっている)
菅田将暉演じる新次は殺人未遂で捕まっていて、
捕まる前までに在籍していた犯罪組織との因縁に
復讐の業火を燃やしている男。
とくに養護施設で実の兄のように慕っていた劉輝を
下半身不随に追い込み今はボクサーとなった裕二に
なんとか復讐したいがためにボクサーになることを決めます。
一方のヤン・イクチュン演じる健二は
吃音を抱えながら床屋で働いていて、
一緒に暮らしている父親からの暴力に苛まれている。
ある日、それに耐えきれなくなり家を出て、
自分を変える意味でボクシングジムにやってくる。
この2人がプロボクサーになる過程を丁寧に描いていきます。
すでに過去の出演作から明らかなのですが、
菅田将暉とバイオレンスの組み合わせは最高!
ということを本作でも決定的に示しています。
狂犬という名がふさわしい暴れっぷりは見事だし、
女性ファンには嬉しい大量のセックスシーンも圧巻だし、
本作は特に顔が。。。
公園をジョギング中に仇敵と遭遇したときに
喝破するときの目ん玉のひんむき方が漫画かよ!
というぐらいなので必見だと思います。
一方でヤン・イクチュンは
息もできないのイメージが強烈なのですが、
本作では打って変わって気弱な男を演じています。
父親の暴力に苦しみ、人を憎むことができない
心優しい青年なのですがコメディリリーフとして抜群。
笑わせてもらえるシーンがたくさんありました。
(後篇はシリアスモードっぽいのですが)
2人とも孤独といえば孤独なのですが、
彼が孤独から解放される瞬間は特別で、
こっちも泣いてしまいました。。
また、この2人を囲む脇役陣はキャスティングが抜群。
ボクシングのトレーナーに
ユースケサンタマリアとでんでんが迎えられていて、
僕が一番好きだったのは2人のリング名を決めるシーン。
ここではTVで見るユースケサンタマリア感が
いかんなく発揮されていて、周りのキャストも
それに乗っていくようなアドリブなタッチで、
とてもオモシロかったです。
(高橋和也はいわずもがないつだって最高)
この話は憎しみがメインテーマに据えられていて、
話が前に進むにつれて膨張していく憎しみ。
どれだけ人は人を憎むことができるのか?
そして憎しみが人を動かす最も強い力になりうるのか?
について考えさせられました。
2人のエピソード以外に健二の父親と
大学の自殺防止(?)サークルのエピソードも
かなりの分量で描かれているんですが、
この話は本当にいるのか?と思わざるを得ませんでした。
後篇をまだ見ていないので、
フリになっている可能性もあるんですが、
社会問題へのイッチョカミ感と
本筋に比べるとあまりに稚拙に見えてしまう展開の
数々にかなりまいってしまいました。。
(これなかったら100分くらいに短縮可能でしょう)
本作の監督は二重生活の岸善幸さんで、
二重生活のときにも見られた様々なカメラによる
ショットの連なりは興味深く思えたものの、
取ってつけたようにしか見えず、
どうせならその手法を本筋で使って欲しかったです。
時間の都合で新宿ではなく、
渋谷で見たことを激しく後悔しました。
映画の舞台となっている街で、
その映画を見る味わいの深さは
見たあとの印象が劇的に違うと思っているから。
なので後篇は新宿で見たい!

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