2017年10月11日水曜日

ドリーム


<あらすじ>
ソ連とアメリカの宇宙開発競争が
繰り広げられていた61年、
米バージニア州ハンプトンにある
NASAのラングレー研究所に、
ロケットの打ち上げに必要不可欠な計算を行う
黒人女性グループがいた。
なかでも天才的な数学の才能をもつキャサリンは、
宇宙特別研究本部の計算係に抜てきされるが、
白人男性ばかりのオフィス環境は、
キャサリンにとって決して心地よいものではなかった。
一方、ドロシーとメアリーもそれぞれ、
黒人であるというだけで理不尽な境遇に立たされるが、
それでも3人はひたむきに夢を追い続け、
やがてNASAの歴史的な偉業に携わることとなる。
映画.comより)

邦題問題で少し前に話題になっていましたが、
そんなことは差し置いて、ファレルが音楽担当した、
NASAで活躍したアフリカ系アメリカンの話
と聞いて楽しみにしていました。
人種差別、性差別に対する鮮やかなカウンターパンチとして、
少し類型的かなとは思ったりしたけど、
逆境に立ち向かいストラグルする人間の話はいつだって心を打たれる。
Beyonceの曲にもあるように
Who run the world? Girls!と高らかに叫びたくなりました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

主人公3人が勤務先のNASAに向かうシーンのあとに
タイトルが出るんですが、
初っ端から人種差別問題が出てきます。
舞台となっているのは1960年代で
マーチンルーサーキングJrが存命している時代。
エンストした彼女たちの車に警察がやってきます。
警棒に手をかけた警官は彼女たちに有無を言わさず
身分証を提示することを求めます。
そこで揉めるっていうのはよく見るシーンですが、
彼女たちのクレバーな立ち振る舞いで
白人警官のパトカーを煽りまくるアフリカ系アメリカン3人組!
という本作の立場を示すような痛快なシーンが最高でした。
映画のつくりがとても丁寧で、映像的な伏線の回収、
たとえば施設内を何度も往復すること、
黒板で計算を披露することなど、
同じ動作でもそこに込められた意味合いが異なるというのが
嫌味なく自然に差し込まれているのがよかったです。
あとは色使いも特徴的。
NASAでは極めてドライな色味な一方、
主人公たちの家や西の計算部屋は温かみがある色味になっている。
「自分の肌の色は変えられないけれど状況は変えられる」という
めちゃくちゃかっこいいセリフがありますが、
それを画面が体現しているというメタ構造が
オモシロいと思いました。(ジャネル・モネイの名演!)
メインテーマとして人種差別が
フォーカスされているんですが、
さらに女性差別までリーチしているのが本作の特徴。
ダブルマイノリティという高い壁に対してくじけないで、
愚直に自分の信念を信じられるタフさ。
自分の思う未来へと突き進む力を与えてくれます。
彼女たちが置かれる苦境が過酷であればあるほど、
心に刺さってくる訳ですが、
たった50年前でもこんな状況だったのかと
知識で知っていても映像で見ると辛かったです。
本作を見た誰もがキャサリンの職場での叫びを
忘れることはできないでしょう。
現在ではこれほどの差別はなくなったものの、
人種問題は未だに、むしろ10年代に入って
加速しているようにも思えてしまう時代にこそ、
こういった分かりやすいストーリーは必要なのかも。
理系映画でもあってキャサリンが
数式書きなぐるシーンとか、
それだけでアガる場面ではあるものの、
一番オモシロかったのは
IBMのコンピューターにまつわる物語。
向学心のあるものが世界を変える、
典型的なエピソードだし、
まさかプログラミング時代突入前夜に
NASAであんなことが起こっていただなんて!
音楽は前述したとおりファレル・ウィリアムズが
曲を書き下ろしていて抜群!
HAPPY以降のソウルマナーチューンのつるべ打ちで、
高揚感!多幸感!が満載。
主人公たちの前向きな心持ちに合っていたと思います。
夢が叶わないこともあるかもしれないけど、
夢を持たないより100倍マシなことを教えてくれる映画。

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