2017年10月13日金曜日

文学会議

文学会議 (新潮クレスト・ブックス)

海外文学を積極的に読むモードの中で、
以前に友人から薦められたことを思い出し読みました。
信頼と実績の新潮クレストブックスなので、
当然オモシロかったんですが
南米文学という新たな扉を開いたなぁ
という読書体験が楽しかったです。
2つの話が収録されていて、
1つはタイトル作の「文学会議」、
2つ目は「試練」という作品。
文学会議は文学兼科学博士が主人公。
冗談ではなく世界征服を目的として
クローンを生み出すマッドサイエンティストを自称している。
彼はベネズエラで開催される文学会議に参加し、
その参加者の細胞を採取してクローンを作る。
しかも、その対象者はなんと小説家で、
サイエンティストの思考過程と
文学会議で彼が過ごす様子が並行して描かれる構成になっています。
思考過程は半分哲学のようなもので、
延々と語り倒している内容自体が興味深かったです。
主人公も小説家なのでメタ的な部分が多々ありました。
一方で文学会議自体は作中内で言及されている通り、
常人の想像がおよばない方向へ物語が向かっていく、
そのスリリングさとくだらなさのバランスが好きでした。
人の細胞かと思ったら、衣服(絹)の細胞を
クローン化してしまって巨大蚕が街を襲うっていう。。。
モスラかよ!というツッコミしたくなった。
また、あとがきを読むと南米文学に置ける作者自身の
立ち位置にまでリーチしていると知り、
この内容でそんな奥深いことが?!と勉強にもなりました。
なんといっても僕が好きだったのは2つめの「試練」
ふくよかな女の子とパンクス女子2人が街で出会って、
スーパーへ強盗へ行くという話。ガールミーツガールもの。
前半は乙女とパンクスの相互理解のための
会話が延々と続くんですが、
理論と感覚がぶつかり合うガールズトークが
超オモシロかったです(デス・プルーフ的)
この部分を読んでいるときに、
なかなか理解が進まない場面が多く、
これが南米文学のノリなのか。。。と痛感しました。
(他の作品を読んでみないと分からないけど何となく)
タイトルの試練と愛の関係を含めた
前半のじゃれ合いのディベートを終えてからの
終盤の強盗におけるハードなバイオレンス=試練。
このギャップにやられちゃいました。
単純に内容がハードコアなだけではなく、
初期北野映画の生死との距離感を
想起させるドライな暴力表現。
すでに「ある日、突然。」
というタイトルで映画化されているようで
これだけ読み手にビジュアライズさせる内容を
どんな感じで映像化しているのか見てみたいです。

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