2016年6月12日日曜日

サウスポー


アントワン・フークア監督で、
ジェイク・ギレンホール主演のボクシングもの!
ということで超期待していた作品。
思わず「落語か!」と言いたくなってしまう、
極めて型通りなボクシング映画なので、
何か目新しいことを期待すると
肩透かしをくらうかもしれませんが、
ジェイク・ギレンホール出演映画にハズレなし!の法則は、
今回も成立していると思います。
一方で話の筋が似ていることから、
クリードがいかによくできたボクシング映画か、
よく分かってしまうという酷な面も…
並べて見ると楽しいと思います。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

物語は完全に栄光を掴んだボクサーとして始まります。

When the sun rises 
I wake up and chase my dreams
I won't regret when the sun sets 
Cause I live my life like I'm a beast 
I'm a mothafucking beast

この一節は冒頭で流れ、控え室でジェイク演じるビリー・ホープが、
爆音で聞いている音楽のイントロでのフレーズ。


ビリーはこの歌詞で描かれている通り野獣そのもので、
その野獣性の功罪が前半で描かれていきます。
功罪の功の部分はボクシングにおいて発揮される。
彼はタイトルホルダーで初めに防衛戦から始まるんですが、
ノーガードで挑発しまくりという
非常に危なっかしい戦い方を得意とし、
顔がボコボコになりながらタイトルマッチには勝つんだけど、
レイチェル・マクアダムス演じる奥さんに、
しばらく試合を休むように心配されてしまう。 
何よりもジェイクの体作りの迫力がハンパない!
本作はもともとエミネム主演で考えられていたそうですが、
彼が音楽活動に専念するということで、
ジェイクに役がパスされたそう。(1)
ボクシング映画は試合までのお膳立て+
ボクシング自体の迫力、現実味が重要な要素なので、
エミネムじゃなくて良かったと思います。
その代わりといってはなんですが、
本作内でかかる音楽はエミネムのレーベルである
Shady recordsの面々で作られておりエミネムも参加。
エミネムは出演していない一方で、
50 centがプロモーター役で出演しています。
彼がいい感じの銭ゲバ野郎を演じていて良かったですねー
こいつが一番悪いのに結果的に何の償いもしていない件は、
本作の納得していない最大の部分だったりするんですが、、、
ビリーの野獣性の功罪の罪の部分が結構キツくて、
身から出たサビとはいえ、ここまで主人公を追い込む映画は
久々見たかもというくらい鬼の展開。
銃社会アメリカゆえの悲劇は、
アントワン・フークア監督らしいと思いますし、
暴力が極限にまで高まった先にある被害は、
誰にでも起こりうることを痛感させられる。
施設の頃から妻と二人三脚で歩んできた人生ゆえに、
彼は自暴自棄に陥り退廃していきます。
妻を射殺した犯人に復讐を企てるシーンがあるんですが、
撮り方含めて、ここでのビリーの目がとにかく強烈!
ナイトクローラーでも見せていた狂気の部分が炸裂してました。
(犯人の実家であるプロジェクトは、
クロッシングのラストと同じ場所な気がする。。。)
ビリーには1人娘がいるんですが、
彼が落ちぶれてしまったがゆえに
監督責任を問われて娘を取り上げられてしまいます。
そこで初めて彼は自分が取り返しのつかないことをしてしまった
と気付き、ボクサーとして人として再生の道を歩み始める後半。
そのパートナーになるのがフォレスト・ウィテカー。
片目が見えないのとずんぐりむっくりな体型から、
丹下段平を想起せざるを得ないトレーナーを好演。
彼がビリーに教えるのは自らをコントロールすること、
そして自らの体を守ること。
これらは妻が彼に望んでいたことでもあり、
妻を亡くしたからこそ素直も受け入れて前に進もうとする、
その姿勢にヤラレちゃいますよねー
またボクシングに真剣に取り組むことは娘を取り戻すためでもある。
ライセンスが停止されている彼がエキシビジョンマッチで示すのは、
これまでとは異なる正統派のボクシングスタイル。
彼は無事に勝ちを収め、そこから一気にタイトルマッチへ。
このタイトルホルダーは妻が殺されたきっかけになった相手だし、
敵のトレーナーはかつて自分を支えたトレーナーという
因縁てんこ盛りの展開で、勝つことによって彼は一気に過去を精算!
復讐をスポーツで果たすというのは、極めて健全な形なんだけど、
あまりにキレイ過ぎるところがちょっとなぁと思いました。
この試合で示すのがタイトルにもなっているサウスポースタイル。
肩でガードしながらジャブを放ち続けてからの、
炸裂する左アッパーカット!それ自体は超かっこいいいんだけど、
もう少し前フリがあればなぁと感じました。
ぐずぐず言ってきましたが、
コーナーにうずくまって、妻への言葉を放つビリーの姿には
涙を流すしかないでしょう!!
ホープという名前にふさわしいエンディングだし、
試合後に娘と対面したときに流れる
Frank Ocean のWise Manが曲、歌詞ともに申し分なし!
(サントラ未収録なのは悔やまれる!)
もともとタランティーノのジャンゴで
使われる予定だった曲らしいんですが、
本作で改めて採用されたそうです。(2)


定型的なボクシング映画だけど、
ジェイク・ギレンホールを堪能するには十分な映画でした。

0 件のコメント: