2016年6月26日日曜日

レジェンド 狂気の美学


<あらすじ>
1960年代初頭のロンドン。貧しい家庭で生まれ育った
レジーとロニーのクレイ兄弟は、
手段を選ばないやり方で裏社会をのしあがり、
アメリカのマフィアとの結託や有力者たちとの
交流を深めることでイギリス社会に絶大な影響力を及ぼしていく。
そんな中、部下の妹フランシスと結婚したレジーは
彼女のために足を洗うことを決意し、
ナイトクラブの経営に力を注ぐようになるが……。
(映画.comより)

トム・ハーディー主演ということで見てきました。
しかも、双子のギャングスターを1人2役でこなすという荒技!
期待度高めで見に行ったわけですが、
トム・ハーディーを堪能するという上では優れた作品。
残酷なギャングの話なんだけど、
全体にポップな仕上がりだったのが意外なところでした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

舞台は1960年代のイギリス。
そこにクレイ兄弟という双子のがギャングスターがいまして…
という昔話よろしくなナレーションによる状況説明から映画が始まります。
前述したとおり、このクレイ兄弟を
トム・ハーディーが1人2役で演じているわけですが、
この演じ分けがとにかくハンパじゃないレベルでした。
兄のレジーはスーツをバリッと決めた超男前の男、
ある種トムそのものであるのに対して、
弟のロンは身体が大きく全体にファットで声色も違う。
はじめは演じ分けているの凄いなーと感動していたんですが、
物語が進むに連れて当たり前のように別人だなと思っている自分がいました。
2人が同じ画面に収まっているのはキメのシーンに限定され、
カットバックを多用することで2人が
同じ空間でいることに説得力を持たせることに成功していました。
また同じシーンで彼の身代わりを担ったのは、
マッドマックス、レヴェナントでスタントを務めた
Jacob Tomuriという人らしい。(1)
多くのギャング映画と同様に栄子盛衰がテーマで、
前半は彼らの栄光と繁栄について、後半は衰退を描いていきます。
やっぱり前半の勢いがあるときが好きでした。
とくに縄張り争いをきっかけに起こるバイオレンスは大きな見どころ。
レジーがいきなり車で轢かれてからの、ダイナーへのトラック突撃、
そしてパブでのどつき合いまでがスムーズでかっこいい。
大勢に囲まれてから兄弟2人が鬼のように暴れまわる姿は超興奮しました。
トム・ハーディーは殴る姿がとにかくかっこいいですよね。
ボクシング仕込みの暴力が素人に降りかかる悪夢を見ているような気持ち。
理性のレジー、狂気のロンという描き分けになっていて、
ロンの狂気は怖かったです。
最初の登場シーンは彼が収容されていた精神病院へ、
レジーとトムが迎えに行くシーン。
ロンの語る話が何を言っているか分からない恐怖がある一方で、
物語を見ていくと実はズル賢さを持っていることが分かってきます。
また、自分が同性愛者であることを公言するところもぶっ飛んでいる。
現代であれば当然あり得る話ですが、
当時のイギリスの同性愛者差別はひどいものだったでしょうから。
(実在のロンはひた隠しにしていたようでした。)
そしてロンの舎弟がキングスマンで主役を務めた
Taron Egertonなのもイギリス!って感じでアガりました。
一方のレジーは理性の人と思いきや怒らせたら容赦ない人。
売上をちょろまかしていていたプッシャーをど突くシーンがまさにそれなんですが、
このプッシャーとの距離感は、レジーの理性が崩壊していく
バロメーターのような役割を担っているのもオモシロい仕掛けでした。
理性のレジーと狂気のロンがタイマンで殴り合う、
カジノでのシーンは本作のハイライト!
タマは反則だろう~っていうセリフと、
あくまで兄妹喧嘩だと割り切る子分たちの姿が笑えました。
本作の大きな軸を担うのはナレーションを務めた
レジーと彼の奥さんとなるフランシスの関係です。
雇っていた運転手の妹だった彼女と初めて出会うシーンが好きでした。
彼女が舐めていた飴を舐めるというエロ味のある行為から、
レジーは飴を噛み砕きます。
「待っていてもしょうがない。欲しいものは取りに行く」
というセリフが最高にイケてました。
そして、彼女と約束を取り決めた後にかかるのはMetersのCissy Strut!
本作がギャングスターを描きながらも、どこかポップな要素があるのは、
音楽が大きな役割を担っていると思いました。
(irrational Manに続き、ここでもRamsey Lewis Trioが!)
フランシスはレジーに惚れ込むんだけど、
何度も服役を重ねるレジーとの結婚に踏み切れません。
結局、彼女はレジーにカタギとして生きること、
刑務所に入らないことを約束して結婚することになります。
結婚式のシーンが強烈で、ギャングとの結婚に反対する
フランシスの母親が喪服で結婚式に参列。
新しい結婚反対の形で笑ってしまいました。
カタギとして生きることを約束したレジーですが、
そんな簡単にシノギを捨てることはできず、
彼はロンドンでの勢力を拡大していきます。
それと反比例するかのようにフランシスとの関係は悪化し、
最終的に最悪の結果を招く。
彼女がナレーションを担っている意味がそこで明らかになり、
少しメタ構造な部分もあって、切ない気持ちになりました。
自暴自棄になったレジーの憎しみの炸裂っぷりが、
本当に強烈で「刺す」アクションが
今年は1つのトレンドなのかなーと思ったり。
今、銀座のギャラリーでロニーの絵が見れるそうなので、
それを見に行きたいと思う次第です。

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