2016年6月8日水曜日

十六小節


十六小節 (ele-king books)



Twigyの自伝!ということで読みました。
日本語ラップ黎明期から、
その独特なラップスタイルで、
唯一無二の存在であり続ける彼が語る
HIPHOPと生きた人生。
幼少期から2001年にメジャーとディールして、
クラシックアルバム「SEVEN DIMENSIONS」を
リリースする2001年までを振り返っています。
前書きに本のタイトルが十六小節であることの
理由が書かれているんですが、
十六小節はラッパーの命であり、
自らの存在をそこに真空パックするものであると。
この時点で超シビれる!
本作の中心となっているのは、
名古屋でDJ刃頭とのユニットであるBeatkicks時代と、
日本語ラップの礎の一端を担ったMicrophone Pager時代。
この2つが非常に深堀されていて、
彼が若手の頃の話はほとんど知らなかったので、
新鮮なことばかりでグイグイ読めました。
他のエピソードは都築恭一著「ヒップホップの詩人たち」でも
披露されていた話が多かったです。
(ヒップホップの詩人たちも大変な名著!)
Microphone Pagerは日本語ラップにおける金字塔。
ラップは聞いていたけれど、
大人になった今、どういった内情があったのか、
それを知ることはとても楽しかったです。
(P.H.FRONのP.H.がポテトヘッドという衝撃 …!)
また、その合間に語られるラップへのスタンス、
HIPOHOPへの考え方が逐一興味深くてオモシロくて、
彼がHIPHOPで大事だと思っているのはUnity。
流行しているバトルはあくまでラップであり、
HIPHOPというカルチャーではないという話は、
色んなところで目にしますが、
結局はUnityという言葉に尽きるかなと思ったりしました。
幅広い音楽から影響を受けたことで、
独自のスタイルを生み出した訳ですが、
彼が七日間で見せた倍速フロウが
レゲエインスパイア系という話は目から鱗でした。
なんとなくTwigyといえばNYサウンドをイメージしていたから、
 Too $hortが超好きって話もビックリしました。



TWIGYのラップはAがBだからCという意味偏重主義から逸脱した、
聞こえの部分のかっこ良さと強烈なパンチライン、
そして行間から意味を読み取る楽しさがあると思います。
ここまではよく聞く話ですが、さらに突っ込んだ話として、
小節 内に含まれる「あかさたな」「おそこそとの」の数に
言及していて、あくまで言葉の響きを
突き詰めていることがよく分かります。
一方で韻に対してはそこまで意識的ではないとのこと。
本作内にはリリックノートの写真が掲載されており、
漢字がほとんど無く平仮名か片仮名であることは、
響き重視である彼のスタンスを端的に示しているでしょう。
黎明期から日本でHIPHOPをやっていたことから、
海外アーティストとのエピソードも超オモシロい!
いわゆるヒップホップすべらない話。
特に感銘を受けたのはMicrophone Pagerで
NYのミュージックセミナーに訪問の際、
Twigyが遭遇したODBおよびWu2軍メンバーたちの
デリでの万引きエピソード。
これがメチャクチャオモシロくて、
以前にRhymesterのラジオで
宇多丸師匠が話していたのを聞いたことがあって、
改めてここで言質が取れていました。
また、Twigyの海外タレントとの一番ビッグなものは
スティービー・ワンダーの前座でしょう。
日本公演において、この曲の上でラップしたそうです。
エピソードの規模がデカすぎる!



現在発売中の日本語ラップ特集で話題のユリイカ6月号と
付き合わせて読むと、ヒップホップに対して、
より立体的に理解できると思います。
(とくにZeebra、いとうせいこう、般若のインタビュー)
争うなら王冠燃やせ!

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