2016年6月17日金曜日

ノック・ノック



<あらすじ>
仕事のため、家族と離れ、
1人留守番をすることとなったエヴァン。
その夜、ノックの音に玄関のドアを開けると、
そこには2人の若い女性が立っていた。
道に迷ったという2人を親切心から家の中へ
招き入れたエヴァンは誘惑に負け、
彼女たちと一夜をともにしてしまう。
それはエヴァンの地獄への第一歩だった。

イーライ・ロス監督最新作!
ということで見てきました。
前作のグリーン・インフェルノも最高でしたが、
本作は彼の代表作のホステルの系譜にある
調子乗った男は滅法ヒドい目に合う!
といった話で最高に胸くそ悪くて楽しかったです!
浮気、不倫しちゃう人に見せたい作品。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

グリーンインフェルノと同様、空撮から始まり、
ワンカットで彼らの部屋の中をぐるりと周り、
家族の肖像画が映るところでタイトルが出ます。
これが最後に効いてくるショットになってました。
エヴァンが建築家、奥さんが芸術家として働き、
2人の子どもが居て豊かな生活を送る、
ハイソなザ・アメリカン家族。
彼らの生活の状況説明の中に、
ささっと前フリを入れ込むあたりの手際の良さは
さすがのイーライ・ロスといった感じでした。
休日を返上して働くエヴァンの元に
雨でずぶぬれになった2人の女の子が登場します。
エヴァンは初め家に入れないで追い返そうとしたんだけど、
電話だけ貸してと言われ、断りきれず、
彼女達を家の中に入れてしまいます。
これがあらすじにもある「地獄への第一歩」
彼女たちはさりげなく要求をエスカレートさせていき、
エヴァンとの距離を詰めていく。
この距離の詰め方と何とか理性でエスケープする、
男女の攻防が見ててハラハラ!
バスローブを着た若くてエロくてカワイイ女子2人に囲まれて、
家族は旅行中で不在で自分1人。
こんな状況の中で誘惑に耐えきれる男は
この広い世界にいるのでしょうか、否いません。
したがって悪い方向に転ぶのは当然として、
一体どのタイミングでエヴァンの心が折れるのか、
というのが見るポイント。
片方の女の子と一緒になった瞬間に
エヴァンが自らのDJテクニックを披露し出すのとか、
下心丸見えで最高最高!(アナログへのこだわりを語るドヤ顔)
Uberが到着し彼は我慢したで、、、と思って、
彼女たちを風呂場まで呼びに行くと、
あらわな姿で2人の女性が迫ってきて、
2人がかりのブロウジョブでついに陥落。。。
そこからパーティーターーイム!!
セックスの見せ方がエロくて、
バスルームの半透明の窓を使った演出が最高だったなー
(ビーチクの婉曲表現)
夢のような時間から目覚めると、2人はひたすら悪態をつきまくります。
エヴァンが怒って警察を呼ぼうとすると、
「うん、呼んでもいいよ。あんたは未成年淫行で捕まるだけだから」
と言い放つ。この後、彼女たちは自分の家まで一旦帰るんだけど、
弱みを握られた男はとても弱い存在であることが、
後半にかけてまざまざと見せつけられます。
ホステルも調子乗った男が痛い目に合う話という意味で、
プロットは似ていますが、
ホステルは非日常空間だったことに対して本作は自宅で起こる悲劇。
いつ誰にでも起こり得ると思えるため、
感情移入度がホステルよりも高い作りになっていました。
彼女たちが本性を現すのが訪問翌日。
危機は去ったかと思いきや、
エヴァンは彼女たちに襲われて本当の地獄が始まります。
フレッシュだったのはターンテーブルを活用したクイズ型拷問。
女の子たちがクイズ番組風にエヴァンの罪を断罪していくんですが、
そのBGMはレコードだし、
拷問として彼にヘッドホンをかけさせて、
爆音でノイズを聞かせて痛めつける!
エヴァンには何回か脱出できるチャンスが何度か訪れるんですが、
どれも寸前のところで上手くいかないのが見ていて辛かったです。
前作のグリーン・インフェルノと似た点でいえば、
自分のことは棚に上げて品行方正を気取っているやつは
地獄に堕ちろ!というところですかね。
何不自由ないエヴァンの生活に、
ヤンキーたちが少し知恵を絞ったことで、
不条理、理不尽が押し寄せて、すべてを根こそぎ奪っていく。
人間としてたくましいのはどちらでしょうか?
という問いかけにも見えました。
主人公のエヴァンを演じるのはキアヌ・リーブス。
去年見たジョン・ウィックでは無敵の殺し屋でしたが、
本作は打って変わって弱い男子を見事に体現。
キアヌ×犬というコンビネーションが
引き続き本作でも展開されている点にはニヤリとさせらました。
キャリア的にシリアス路線多めだったキアヌですが、
それゆえのコメディで発生するギャップが良い味を出しています。
本作の最大の見せ場が彼が正直な気持ちを叫ぶシーン。
「君たちが僕を誘惑してきた訳で、僕は悪くない!
ピザの1枚無料と本質的に一緒じゃないか!」
と堰を切ったように叫ぶ姿は情けなくて笑ってしまいました。
すべてが夢だったらいいのに。と本作を見た誰もが思うわけですが、
終盤で彼女が着ているTシャツに書かれた、
意図したかは別として「It all was a dream」という
BiggieのJuicyの出だしを思わせる演出もニクい。
(鏡に書かれた文字は夢じゃないという
逆の意味になっているのもナイス!)



本作の問題点であり魅力でもあるという
矛盾した言い方にもなるんですが、
彼女たちが物語内で一切懲らしめられない点があると思います。
一般的な映画であれば、彼女たちも割りを食う部分が
少なからずあると思うんですけど、
一方的にエヴァンを痛めつけて終わります。
ここで胸クソ悪いと思う人もいると思います。
とくに全く無関係のルイスが死ぬ必要があったのか、
åという点は疑問に思います。後処理は笑っちゃいましたが。
その一方で、せめて映画内では持たざるものに復讐したい!
というある種の露悪性も僕は嫌いに慣れないなと思いました。
終盤のSNSを使った地獄絵図は最高最高!
LikeとDeleteが並列になるUIは現実に存在しませんが、
なんでもかんでもイイね!押してんじゃねーぞ!
というイーライ・ロスのスタンスを感じました。
ラストは冒頭と同じワンカットで部屋を見せていくんですが、
そこに加えられるのは罵詈雑言。
1つの過ちが巻き起こす地獄を見事に表現していたと思います。
すべての男性は本作を見て自戒の念を強めましょう!

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