2016年6月23日木曜日

10クローバーフィールド・レーン



<あらすじ>
ある日、見知らぬシェルターの中で
目を覚ました若い女性ミシェル。
そこには「君を救うためにここへ連れてきた」
と話す見知らぬ男がおり、
ミシェルと男の共同生活が始まるが……。

大胆な予告編を見てから楽しみにしていた作品。
前作のクローバーフィールドからは
未知の外敵が襲ってくるという設定のみを拝借し、
全く新しい映画に生まれ変わっていました。
僕は本作の方が断然好きです!最高最高!
SF要素は半分おまけでしかなくて、
サスペンススリラーとして抜群の出来だと思います。
Outside The Flameなテーマも響きました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

タイトルが出るまでのオープニングシーンが
本当に素晴らしくて、この時点でもうビンビンでした。
主人公のミシェルが部屋から出て行くため、
支度をしているところから始まるんですが、
彼女の人物像と伏線となる設定を、
セリフは一切なく淡々と映し出していきます。
そこから車で走っていて、旦那から電話かかってくるけど、
適当にあしらってたところで、
いきなりど迫力のカークラッシュ!で
クレジットを挟みながらのタイトルどーん!100点!
ド派手なオープニングから前半から中盤にかけては、
シェルター内での密室サスペンスが展開されていきます。
登場するのはミシェルを助けたハワードと
シェルターを作ったエメット。
SAWを彷彿とさせる密室で固定されたミシェルは、
監禁されたと思いDIY精神全開で
なんとかエスケープしようとします。
彼女のタフネスは物語内で一貫していて、
このDIY精神が常に彼女を支えていることに好感を持ちました。
助けたと主張する割に 彼女の自由を拘束するハワードに
違和感を持ったミシェルは外に逃げようとします。
予告編で使われていたシーンなんですが、
その手前のハワードの喝からの鍵盗みが最高にハラハラするし、
ビール瓶殴打で机の上を滑っていくのがカッコよかった!
結局ミシェルは自分の目で外の現実を知ることになるんですが、
「外敵は存在するのか?存在しないのか?」
というのが密室内での懸念事項になります。
ここが何度もぐらつき、常にグレイである点が、
物語の推進力になっているのがオモシロかったです。
形は違いますが、ドキュメンタリーのFAKEと構造は同じで、
情報の断片から自分で考えなければならない状況は、
ときとして面倒だけど思考停止のままじゃダメだぜ!
というメッセージを受け取りました。
ハワードは終末論者であるがゆえに
シェルターを用意していた訳で、
そのシェルターが無ければ、
2人とも生きていない前提があるため、
一概にハワードを切り捨てられないバランスも絶妙。
また、3人がルールを守って生活していれば、
何の問題もないように見せるのも良くて、
居心地の良いところから、
自分の主義主張で抜け出すことの難しさは、
社会に出て転職も経た僕にとっては響くものでした。
ミシェルとエメットはハワードは信用できないと判断し、
外に出るための準備を内密に始めます。
ここのDIYがたまらなくてシャワーカーテンの防護服、
ペットボトルのガスマスクのルックが可愛かったなー
そんなコソコソした行動をハワードが見逃す訳もなく、
彼の狂気が一気に加速していきます。
次亜塩素酸を使った演出は
ブレイキング・バッドでもありましたが本作でも大活躍。
2人がくすねたものを目の前で溶かし、
エメットを容赦なく始末してから、
髭剃ってアイス持ってくるまで狂気が炸裂しまくりで、
一生忘れられないキャラクターになりました。
シェルターのエスケープシーンでの、
ダクトを使ったアクション然り、鍵の壊し方然り、
前半の伏線が鮮やかに回収されていくのが、
見ていて気持ち良かったです。
いざ外に出てみたら、ハワードの言っていた話は
やっぱり嘘じゃん!と思いきや、
嘘じゃないこともあって、その部分と対峙する終盤。
話のリアリティーラインが一気に緩くなるんですが、
ファウンドフッテージ形式だった前作を想起する、
手持ちカメラでミシェルの逃げ惑う姿を抑えていることで
緊張感を持続させることに成功していました。
終盤は閉鎖空間の演出が効果的で、
車、納屋、ペットボトルのガスマスクと、
様々な空間に身を置き何とか生き延びようとする、
彼女のアグレッシブな姿勢に目が奪われましたねー
ラストの彼女の選択にサムアップし、
霧の中、深夜で人の少ない街を颯爽と
自転車で駆け抜けて僕は家路につきました。

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