2016年6月28日火曜日

日本で一番悪い奴ら



<あらすじ>
綾野剛が演じる北海道警の刑事・諸星要一が、
捜査協力者で「S」と呼ばれる裏社会の
スパイとともに悪事に手を染めていく様を描く。
大学時代に鍛えた柔道の腕前を買われて
道警の刑事となった諸星は、
強い正義感を持ち合わせているが、
なかなかうだつが上がらない。
やがて、敏腕刑事の村井から
「裏社会に飛び込み『S』(スパイ)を作れ」
と教えられた諸星は、その言葉の通りに「S」を率いて
危険な捜査に踏み込んでいくが……。

凶悪が強烈にオモシロかった白石監督の第2作!
ということで見てきました。
予告編のピエール瀧を見るだけで
ヨダレ垂らしそうになるくらいオモシロそうだったので、
かなり期待していたんですが、
それにバッチリと応える圧巻の内容でした。
Fuck コンプラ!!と言わんばかりに、
SEX!チャカ! シャブ!の景気の良さがハンパないし、
善悪の境目がトロけていく瞬間がたまらなかったです。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

柔道するシーンから映画が始まるんですが、
本作のファーストショットを飾るのは、
まさかの高坂剛 a.k.a 世界のTK!
柔道部の監督役なんですけどハマり役でブチ上がり。
主人公の綾野剛演じる諸星は、めちゃめちゃ柔道強くて、
その力を見込まれて道警に入り活躍。
機動隊に異動してから本格的に話が始まるんですが、
最初の捜査からニクい演出が。
車で犯人を追っていて、
一度降りて犯人を捕まえようとするんだけど、
車で逃げられてしまいます。
再び車で逃げるときに諸星がシートベルトをしようとすると、
上司が「シートベルトしてる暇ねぇだろ!」と。
これは千原ジュニアがちょくちょく揶揄している、
あまりにも過剰な「正しさ」への要求に対して、
本作は「逸脱する」という宣言だと思うんです。
はじめは芋くさい、ただの柔道野郎だった諸星が
徐々に非合法な捜査に手を染めて
道警内でのし上がっていく姿がワクワクしました。
その指南役を担うのはピエール瀧演じる村井です。
隙あらばケツ触るとかでやりたい放題だし、
何よりもめちゃめちゃ悪そうな顔よ!
しかもアップが多いから余計に際立つ仕掛け。
良い意味でも悪い意味でもクソ真面目な諸星は
その言葉を真に受けてヤクザに自分の名前を
売り込み自分のスパイを探し求めます。
その結果、シャブとチャカを挙げることに成功し、
成果主義の警察内でメキメキと頭角を現します。
しかし、その捜査にヤクザからイチャモンがついて、
彼の警察人生を大きく変えるヤクザとの出会いがあります。
それが中村獅童演じるヤクザ。
ここでの2人のやり取りで一線を超える瞬間があるんですが、
それが痰を諸星が無理やり吐くという演出。
彼が少しずつ背伸びしていって悪の道に染まっていく過程は
中学生がヤンキーになるみたいなレベルから
始まる点がオモシロイし、はじめは慣れていないことも
それが習慣となれば大したことじゃなくなってしまう。
痰、タバコ、シャブと対象が変わっていくだけで、
本質の部分では同じっていう見せ方が良かったです。
諸星がマル暴に移ってからは見た目も完全にヤクザ化。
街のチンピラや裏稼業で生きる者たちは
彼のことを畏怖と尊敬の眼差しで見つめるようになります。
増長しまくりの諸星はイケイケドンドンで
女は抱きまくりだし、当時の村井と完全に同化。
物語がさらに加速するのは諸星が銃対策課に異動してから。
その頃に仲良くなるのがラッパーのYOUNG DAIS演じる山名と、
お笑いコンビのデニスの植野の2人で、
彼がコメディリリーフとしてとても良い塩梅でした。
植野さんはパキスタン人役なんですけど、
見た目と片言の日本語は少しやり過ぎ感ありましたが、
周りのパキスタン人をまとめる姿が怖かったし、
インド人と間違われてキレるくだりが好きでした。
そしてTOKYO TRIBEから役者として
本格的に活動しているYOUNG DAISは
何かしらの助演男優賞イケるんじゃないか?!
というぐらい抜群の演技でした。
人懐っこい舎弟っぷりがすごく好きだったし、
後半にかけて諸星が崩壊していくときも
彼だけでは常に兄貴である諸星のことを考えて、
なんとかしようと画策する愚直な姿にグッときました。
(ハルシオンをずっと服用しているところと、
諸星のシャブ打ちを心配するシーンが超好き)
この蓄積があるからこそ終盤はとても切なくなりました。
本作を特別なものにしているのは、
間違いなく綾野剛の存在感、それに尽きると思います。
アクション、セックス、シャブ、
何でもござれのこれこそ体当たり演技と言っていいでしょう。
純朴な警官からの豹変っぷりが本当に見事でした。
道警の拳銃捜査の一線超えて、
皆が麻痺した状態にある中で、
彼は1丁数万円で調達して道警の検挙率に協力していく。
これが実話ベースっていうのは頭が痛くなるし、
わずか十数年前に起こっていたと考えると
頭が痛くなってきます。
拳銃200丁を検挙できるんだから、
シャブ20kg密輸はOKでしょ?!っていうロジックや
拳銃買って検挙するための資金調達で
シャブを売りますっていうロジックは
不謹慎かもしれなけいけれど笑っちゃう。
どんどん善悪の境目があいまいになっていき、
仲間にも裏切られ自暴自棄となった諸星が
あれだけ舎弟にも注意していたシャブに
自ら手を出してしまってからは地獄絵図。
夕張異動後のボロボロ具合が特に凄まじかった!
原作も読んで見たいなーと思います。

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