2016年7月26日火曜日

突然ノックの音が

突然ノックの音が (新潮クレスト・ブックス)


小説家であるエドガル・ケレットの
あの素晴らしき七年という
素晴らしいエッセイを先日読んだのですが、
改めて彼の小説を読んでみました。
彼の背景を知ってから読むことができたので、
とても楽しく読むことができました。
今年出会った作家で一番好きかもしれません。
本作は短編集で長いものから短いものまで、
38の物語が入っている作品。
基本的に時代や場所は日常的なんだけど、
その日常に「突然ノックをする」かのごとく、
フィクション性が急にインサートされてくる話が多くて、
このギャップがなんとも愛おしい。
あの素晴らしき七年のレビューにおいて西加奈子さんが、
「言葉の、そして物語の力を信じている人だけが
出来る勇気の書でもあるのだ」
と評していますが、物語の力を信じていることは
小説からビシビシ伝わってきます。
タイトルにもなった「突然ノックの音が」は
物語への強烈な要求を題材にしていて、
ファニーなんだけど物語への真剣さが伝わってきました。
起承転結で言うところの起承で
終わってしまうような話が多いので、
白黒はっきりつけたい人、
たとえばミステリーが好きな人などにとっては
肩透かしを食らったように感じるかもしれません。
あとがきに書いてあったんですが、
彼の創作方法としては、一旦長めに書いておいて、
そこから推敲し言葉を研ぎ澄ます作業を経ているとのこと。
ゆえに明快なオチはないにしても、
何とも言えない余韻が残り、余白を自分で想像してしまう、
そんな魅力が彼の作品にはあると思います。
男女の関係性にまつわる話が多く、
しかも浮気や愛する人を亡くしてしまうといった
アンハッピーな設定が多いのも特徴的。
そのアンハッピーをずしんと受け止める話もありますし、
突飛な展開で思わず微笑んでしまうような話まで。
絶望の中にも希望があるし、希望の中にも絶望はある。
といった価値観が好きでした。
現状、日本語で読めるのは2冊しかありませんが、
信頼と実績の新潮クレストブックスが
何とかしてくれると信じてる!

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