2016年7月11日月曜日

シング・ストリート 未来へのうた



<あらすじ>
大不況にあえぐ85年のアイルランド、ダブリン。
14歳の少年コナーは、父親が失業したために
荒れた公立校に転校させられてしまう。
さらに家では両親のケンカが絶えず、
家庭は崩壊の危機に陥っていた。
最悪な日々を送るコナーにとって唯一の楽しみは、
音楽マニアの兄と一緒に隣国ロンドンのMVをテレビで見ること。
そんなある日、街で見かけた少女ラフィナの
大人びた魅力に心を奪われたコナーは、
自分のバンドのPVに出演しないかとラフィナを誘ってしまう。
慌ててバンドを結成したコナーは、
ロンドンの音楽シーンを驚かせるPVを作るべく
猛特訓を開始するが…
映画.comより)

Once ダブリンの街角ではじまりのうた
といった音楽にまつわる最高の映画を生み出してきた、
ジョン・カーニー監督最新作。
今回も最高すぎる仕上がりでした!
逆境を跳ね返すための音楽の力を
まざまざと見せつけられて泣きました。
僕たちの音楽は鳴り止まない!!

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

彼の両親が激しい夫婦喧嘩をしている中、
アコギを奏で辛い現実からエスケープする
コナーの姿が哀愁を誘うオープニング。
公立の男子校に転校させられ馴染めない中で、
ラフィナと出会いバンドを組むことになります。
モテるために音楽を始めるという
至極真っ当な動機が良いなーと思いました。
(スクール・オブ・ロックよりも生徒が主体的)
そこからDIYでバンド立ち上げていく様子が
見ていて微笑ましいんですよねー
とくにキーマンとなるのがマルチプレイヤーのイーモン。
主に2人で楽曲を作っているんですが、
ギターを弾きながら歌詞、コード、コーラス合わせて、
曲を作っていく様がたまんないんですよねぇ。
自分たちで何かをクリエイトすること、
音楽の初期衝動が鮮やかにパッケージされてました。
あとバンドメンバーの顔面力が最高最高!
こましゃくれ感と可愛さのギリギリのバランス。
皆で初めてギグッたときに全員が
「俺たちイケてんじゃね?」という顔が好きでした。
彼らにはビデオを作るためとかギグをやるとか、
音楽を演奏する動機の風呂敷を広げすぎないところが好感大。
クソッタレな日常からのエスケープとしての
音楽の大切さを心底感じさせられました。
とくにDrive It Like You Stole ItとBrown Shoes
この2曲が余りに素晴らしすぎて、、、
曲が鳴るだけで強烈にエモーションを掻き立てられる。
強い自己の尊厳を宣言する歌と、
大人が決めたルールへの反逆の歌。
茶色の靴ダメ!とか化粧すんな!とか、
高校だから注意されてしまうのは
しょうがないかもしれないけど、
そこでハイハイと従う訳ではなくて、
音楽だと反撃できる力強さがとにかく眩しい!!
今の時代だとヒップホップがダイレクトに
担っている部分だったりする訳ですが、
80年代はそれがロックだったんだろうなーと。
年上の彼女に振り向いてもらいたくて、
兄貴に相談して必死に自分たちのイケてる音楽を探して、
未来派と名乗る姿にオジさんはグッときちゃう。
あと高橋芳朗氏のラジオを聞いていた身としては、
"happysad"というキーワードが出てきたのもグッときました。
コナーとラフィンの恋愛模様は甘酸が過ぎる!
ラフィンは当時の言葉でいえばマブいギャルであるのに対して、
コナーはスクールカースト下位のNERD。
ここも音楽の力が機能して2人の距離が縮まっていくんですなぁ。
恋愛関係ではバラードがフィーチャー。
テープをポストに投函するっていうアナログ具合や、
体育館ギグでの盛り上がらねーぜという意見を無視してでも
自分の思いを伝えようとする姿勢にグッときました。
そしてエンディングのイギリスへと向かう展開は
日常からのエスケープという青春映画の王道。
すでに大人となってしまった今では、
はじまりのうたの方が好みだと思う一方で、
彼らの状況を客観視しながら、
刹那性を感じられるのは大人の特権なのか、
とか考えたりしましたが、
そんなことはどうでもいいくらい最高の映画!

0 件のコメント: