2016年7月24日日曜日

ヤング・アダルト・ニューヨーク



<あらすじ>
8年間も新作が完成していない
ドキュメンタリー映画監督のジョシュと妻のコーネリア。
40代になり、人生にも夫婦にも何かが欠けている
と感じるようになったある日、
ジェイミーとダービーという20代のカップルと知り合う。
時代に乗り遅れたくないとSNSに縛られる日々を送る
自分たちに比べ、自由でクリエイティブに生き、
レトロなカルチャーを愛する若い2人に刺激を受けた
ジョシュとコーネリアは、再び活力を取り戻していくが…
映画.comより)

ノア・バームバック監督最新作ということで、
とても楽しみにしていた作品。
前作のフランシス・ハが大好きな作品で、
果たして今回は?!と思って見たら、
なかなかに厳しい姿勢の映画でした。
世代間ギャップの話とも言えるでしょうし、
大人がドタバタすることは身も蓋もないですよね、
というね〜僕は20代で本作の対立構造で言えば、
ヤングに該当するのかもしれませんが、
身につまされることもありました。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

映画監督のジョシュを演じるのはベン・スティラーで
妻のコーネリアを演じるのはナオミ・ワッツ。
友人夫妻宅で彼らの子どもと戯れるシーンから始まります。
はじめ主人公2人の子どもかと思いきや、
コーネリアの子どもの抱き方の不器用さから、
彼女の子どもでないことが分かる。
本作では「子どもがいる/いない」が
「大人になる/ならない」の
境界線のごとく描かれているのが興味深かったです。
僕は「子どもいる/いない」なんて
その夫婦の自由じゃん!と思いますし、
それぞれの人生がありますよね。
子どもがいれば、その成長を見守る楽しさがあり、
子どもがいなければ、比較的自由が効くので
フットワーク軽く何でもできる。
主人公たちも過去に子どもを作ろうとしたけど、
2回流産してしまって断念。
子どもの代わりに手にした夫婦2人の自由を謳歌した生活の中で、
ジェイミーとダービーという、
今のアメリカでCoolとされる若者と出会います。
彼らは過去のカルチャーや先人へのリスペクトを示す。
40代の主人公たちが最先端のテクノロジー、カルチャーに
必至に活用している一方で、
若い夫婦がレコードに代表されるGood Thingsを
余裕を持って楽しんでいる姿の対比が超厳しかったです。
本作の好みが別れるのは、
「いい歳こいたおっさん、おばさんが
必至にトレンドに追いつこうとしてんじゃねえよ」
と思えてしまう作りだと思います。
確かに街中でiPadのマップで行き先を探すオジさんを見ると
手に持ってるのが石版に見えるときがあります。
最近の話で言えばポケモンGOですよね、
夢中になって街を徘徊する大人を見ると
そこそこ虚しい気持ちになります。
若い頃に背伸びして自分の知らないものに
触れようとする姿勢はカッコ良く映るけれど、
年取ってから同じことすると必死感がどうしても出てしまう。
この辺は難しいところですよね。
見てて辛かったのは幻覚剤を飲んで、
邪気を払いましょうというイベント。
そんなクソヒッピーみたいなこと、
40越えた大人が参加するってどういう了見なんだよ
と思ってしまうのは致し方ないと思います。
また前述した子どもの話も関わってきます。
子どものいる大人は子どもが最優先事項として存在し、
今何がトレンドで〜みたいなことと無縁になりがち。
友人間での会話の話題も自然と子どもの話になりますよね。
そこにフィットできない切なさとでも言いましょうか。
その象徴が子どもの歌教室に連れて行かれるシーン。
連れて行った友人は、子どもを持つことの素晴らしさを伝えたい!
という優しさのつもりなんでしょうけど、
余計なお世話だバカヤロウ!と言いたくなるのはよく分かります。
こういった断絶があって疎遠になるという話はよく聞く話ですし、
すでに僕はそのフェーズに入りつつあります。
皆が自分の人生に向き合っているときに、
アホみたいに映画見たり、本読んだりしている訳ですから。
ただ子どもがいないことが
人間として足りていないという見方をされてしまうのは
ホント気持ち悪いよなーと思います。
(岸政彦さんの断片的な社会学でも書かれていた話ですよね)
はじめは純粋な好青年と思われたアダム・ドライバー演じる、
ジェイミーが実は腹黒野郎と発覚していくのが後半。
すべてを計算した上でジョシュとコーネリアに
取り入っていたことが明らかになっていきます。
ここから想像されるのは経験を持つ
年長のジョシュがジェイミーに一泡吹かして、
大人は舐めたらあかんわ〜と反省させるという展開。
しかし、本作はそれも裏切って徹底的にジョシュを追い込む。
過程は重要なことではなく、重要なのは結果、全体像なのである、
というメッセージは十年近くかけて真面目に向き合って、
1本の映画を作ろうとしているジョシュにとっては辛い話。
2人ともドキュメンタリーを作っているので、
1つのドキュメンタリー映画論が
フィクションの中で展開されるメタな作りは
オモシロかったと思います。
ジョシュはジェイミーのヤラセの部分を糾弾するんですが、
彼自身もそれに近いインタビューの取り直し、
つまり時系列の入れ替えをやってる訳です。
ジェイミーはジョシュを騙したという
仁義なき撮影法になっている点が問題な訳で、
そこもっと言えよ!と思いました。
東京ポッド許可局で年を取るに連れて
自分が本当に必要なものが洗練されていくという話がありましたが、
本作のセリフにもある「足るを知る」ということは、
意識していきたいなーと思う映画でした。

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