2016年7月22日金曜日

黒沢清、21世紀の映画を語る

黒沢清、21世紀の映画を語る


クリーピーが滅法オモシロかったので、
改めて黒沢清監督の作品を本腰入れて見ていこう!
と思ったので、先に書籍を買って読みました。
タイトルは21世紀の〜となっていますが、
黒沢監督の映画論、撮影術といった内容で、
めちゃめちゃ興味深くてオモシロかったです。
2004年〜2009年の講演内容を
文字起こしした形式なので格式張ってなくて読みやすいです。
黒沢監督の映画は物語としてのオモシロさは当然のことながら、
映画内の1つ1つのショットに意図を感じるなー、
とぼんやり思っていた部分が本作を読むことで
なるほど!とクリアになっていきました。
そもそも映画とは何ぞや?という根源的な問いに対して、
彼は映画誕生初期のリュミエール「工場の出口」を
繰り返し引用し、映っていないものに思いを馳せる、
それが映画であると主張しています。
この主張を踏まえると彼が映画のショットに
こだわる理由がよく分かりました。
とくにワンショットで見せることの意義と、
カットを割ることによる世界(リアル)の断絶という話は、
これから映画を見るときに意識してしまうなーと。
また映画を撮影する場所に関する話も興味深かったです。
映像を映画最大の魅力と言う彼が作る映画において、
一体どこなんだ!というショットや
ロケーションそれ自体が意味を持っていること、
これらについて明確に言葉で語られると
より一層理解が深まりました。
目の前のリアルと脚本で語られる物語のバランスを上手く取って、
映画というメディアを形成するのが監督の仕事という話も、
脚本がオモシロければ映画はオモシロくなる
と思いがちな部分に対するカウンターとして
大事な話だよなーと思いました。
紹介されている映画はどれもオモシロそうだし、
すでに見たことのある映画でも
「そんな見方してるんですか?!」的な話もあって
映画レコメンド本としても良いと思います。
何より本作を読むことは黒沢作品を見る際に、
さらに豊かな映画体験を保証してくれること間違い無しなので、
彼の作品が好きな人は必読の1冊かと思います。

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