2016年7月2日土曜日

失点・イン・ザ・パーク

失点・イン・ザ・パーク


近所で飲んだ帰りにたまに
ブックオフ寄ってサルベージすることあるんですが、
本作もそんな感じで買った本。
ラッパーのECDによる半自伝小説。
近年はデモを筆頭とした社会活動に注目が集まっていますが、
本職はラッパーであり、昨年リリースされたアルバム、
Three wise monkeysは結構好きで聞いてました。
(あと憧れのニューエラも好き)
本作は2005年にリリースされた作品です。
長編1つと短編1つで構成されていて、
長編のタイトルが失点・イン・ザ・パーク。
主人公はアルコール中毒のラッパーで、
彼がアルコール依存症から脱出し、
ラッパーではない仕事につくまでのお話。
アルコール依存の描写がとてもリアルで、
飲まないとやってられない切羽詰まった様子が
ビシビシと伝わってきました。
本当に依存してたんかな?と思って調べたら実話のよう。
中島らもの「今夜、すべてのバー」に似てるなーとか、
半自伝で自身の職業に失望している様子は
中原昌也に似てるなーとか思ってたら、
いずれも本文中で言及されていて、
ヒップホップのサンプリング精神を感じました。
パクリちゃうでサンプリングや©SHINGO★西成。
ただし、「今夜〜」が楽天的に見えるくらい、
かなり思い詰めていて、アルコールが抜ける中盤まで、
死の匂いが強烈にしました。
その死の匂いに対して生を象徴するのが猫。
ただカワイイ〜という今の風潮のような描写だけではなく、
生々しい猫の出産を描き、「気持ち悪い」
というナチュラルなリアクションを取ってるのが笑えました。
ラップを書く描写や固有名詞がガンガン登場するし、
ECDと仲間から呼ばれているため、
もうほぼ自伝ぐらいの勢いかと思います。
固有名詞でビックリしたのはD.Oとの邂逅が描かれていたこと。
これは実際にあったことなのでは?
と思うと楽しくなってきます。
もともとラッパーとしてレコード会社と契約してて、
その契約を切られるから仕事を探すんだけど、
年齢を含めた資格で仕事が限定されていく、
社会の残酷さは読んでて辛いけれど、
それが物語を読ませる大きな原動力になっていました。
一旦猫をリジェクトした彼の最後の判断が
温かな視点で好きでした。猫大切にしよう。

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