2016年7月25日月曜日

AMY エイミー

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<あらすじ>
06年発売のセカンドアルバム「バック・トゥ・ブラック」は
全世界で1200万枚以上を売り上げ、
08年の第50回グラミー賞では5部門を受賞するなど、
世界で人気を集めたワインハウス。
しかし、歌手として成功する一方、
過激な発言などでプライベートも注目され、
スキャンダルも多く報道された。
そんなワインハウスの知られざる真実を、
未公開フィルムやプライベート映像も交えて映し出していく。
映画.comより)

2011年に亡くなったエイミー・ワインハウスの
ドキュメンタリーということで、
彼女の命日である7月23日に見てきました。
彼女の歌は以前から好きで亡くなったときは
結構ショックだったんですが、
本作は偉大な才能をくだらないことで、
世界が失ってしまったんだということを
直視させられる内容で見ていて辛かったです。
彼女の歌手としての歴史がダイジェストで分かりますし、
あの独特の歌声と圧倒的歌唱力が
改めて素晴らしいものであることを心底実感しました。
ただ、映画の構造の歪さが少し気にかかって、
結局これはエイミーにとってはどうなんだろうか?
という疑問を持ったりもしました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。


ホームビデオでまだ少女だった頃のエイミーが

友達のためにバースデイソングを歌うところから始まります。
この頃からすでに片鱗を見せる彼女の歌声の魅力。
粘っこいとでも言うべきか、
往年のソウル、ジャズシンガーのような声が、
僕が彼女を好きな理由です。
本作はニュースやTV番組と彼女の恋人、友人たちが
撮影していたプライベートなビデオ素材で構成されており、
そこに当時を振り返る友人・アーティストのインタビューを
音声のみインサートしていくので、
いわばコラージュのような作りになっています。
オリジナルの映像素材として特徴的なのは
ドローンを使ったショットでロンドンの街を優雅に映し出します。
まるでエイミーが空を飛びながら自らの街を眺めているかのよう。
彼女は2枚のアルバムをリリースしていますが、
そのリリースタイミングで前後半が分かれているような構成。
まず1枚目のアルバムのリリース、すなわちデビュー期ですが、
僕は全然知らなかったことばかりで、
とてもオモシロかったです。
若いA&Rがさらに若い才能を見出し、
彼女を売り込んでいき、彼女は驚くべきパフォーマンスを発揮する。
もっとおじさんが惚れ込んだのかと勝手に思っていました。
またサラーム・レミが彼女のデビュー曲をプロデュースし、
その後も良き理解者として彼女に寄り添っていたことは、
彼女の才能をいち早く察知していたからでしょう。
1枚目のアルバムが完成して、そこそこの成功を収めた後、
彼女の運命を大きく左右する元旦那のフィールダーと出会う。
エイミーはフィールダーのことを心底愛しているんですが、
結果的にフィールダーは元彼女のことが忘れられず、
エイミーの元を去ってしまったことで
彼女はアルコールに溺れてしまう。
この体験が彼女の代表曲であり人生を変えることになる、
「Rehab」を生み出すきっかけになるんだから、
人生何が起こるか分からないものです。
Back To Blackの製作においては、
フィールダーとの別れを音楽で吐き出す!
ということが良い方向に作用したように見えるし、
彼女自身もインタビューで語っていました。
また、このタイミングでデビューを支えた
マネージャーと別れ元プロモーターの人を
新たにマネージャーとして迎え入れます。
旧マネージャーが語る内容が
ショービズの残酷さを物語っていて、
彼が担当しているときに彼女を施設へ入れて、
アルコール中毒をきっちり治していれば、
死は避けられたかもしれないと。
その体験があったから「Rehab」という曲が
生まれているので、何とも言えないアンビバレントさがあります。
(歴史に「たられば」「かも」は
禁句とは重々承知していますが…)
Back To Blackはイギリスだけではなく、
アメリカを含め全世界でヒット、
ツアーにも精を出し順風満帆かと思いきや、
一度別れたフィールダーとよりを戻し、
ここからヘロイン、コカインといった
ドラッグに溺れていってしまいます。
本作内ではフィールダーがそそのかしたような
ニュアンスで編集されていました。
グラミー受賞によりセレブとなった彼女を
追い回すパパラッチの出現も
彼女をドラッグに走らせた大きな要因だと思います。
2000年代後半にあんだけ分かりやすい、
とんでもキャラクターがいたら、
そら食いつくわなーと思いました。
僕が本作の歪さを感じ始めたのはこの辺りから。
前述したとおり本作は過去の映像のコラージュ、
カットアップで映像が構成されているんですが、
観客が見ている映像はパパラッチの産物、
またはフィールダーや友人、家族が撮影したビデオが
非常に多くの割合を占める訳です。
パパラッチはエイミーを追い込んだ訳なので、
当然悪かったと思うんですが、
彼らの素材を使って悪党扱いするのってどうなん?と。
見ている観客も然りなのは分かっていますが、
エイミーはどう思うかな、なんておセンチな気持ちになりました。
少しネガティブなことを述べましたが、
それを補ってあまりある彼女の歌は
本当に素晴らしかったです。
本作最大の魅力であることに
異論がある人はいないと思います。
サラーム・レミやマークロンソンのスタジオで、

彼女が歌を披露する姿は超カッコいいし、
歌詞に字幕がきっちり付くので、
その歌の背景と内容の理解が深まりました。
終盤のトニー・ベネットとの共演なんて、
超シビれる内容で最高最高!
エイミーの歌の内容があまりに素晴らしいがゆえに、
もうこの世にいないことが残念で残念で…
亡くなる直前に検討されていた、
The Rootsの?uestloveやMos Defとのプロジェクトが
実現していれば、どうなっただろう?とか、
ロバート・グラスパーを筆頭とした、
2010年代のジャズとのケミストリーを想像したり。
映画を見終わった後の圧倒的な喪失感は
筆舌に尽くし難い部分がありました。
この世に残された僕達ができることは
彼女が残した素晴らしい音楽に耳を傾け、
エイミーのことを後世に語り継ぐことでしょう。
もしエイミーが生きていたら今の時代に
どんな曲を歌うかなーと考えましたが、
最後はこんな曲で締めたいと思います。(カバーですが、、)



Our day will come

And we'll have everything
We'll share the joy
Falling in love can bring

No one can tell me

That I'm too young to know
I love you so
And you love me

Our day will come

If we just wait a while
No tears for us
Think love and wear a smile

Our dreams have magic

Because we'll always stay
In love this way
Our day will come

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