2016年12月29日木曜日

ドント・ブリーズ


<あらすじ>
親元を離れ、街から逃げ出すための資金が必要なロッキーは、
恋人のマニーと友人のアレックスとともに、
地下に大金を隠し持っていると噂される盲目の老人の家に強盗に入る。
しかし、その老人は目が見えないかわりに、
どんな音も聴き逃さない超人的な聴覚をもち、
さらには想像を絶する異常な本性を隠し持つ人物だった。
暗闇に包まれた家の中で追い詰められたロッキーたちは、
地下室にたどり着くが、そこで恐るべき光景を目の当たりにする。
映画.comより)

今年の映画納めをマイルス・アヘッドとすることに
どうしても抵抗感があって絶賛大阪帰省中ですが見ました。
無茶苦茶怖かったし超面白かったです。
レイトショーで見たのにほぼ満席で、
どこにそんな需要が?!と思ったんですが、
吊り橋効果を期待したカップルがたくさんいました。
(隣のカップルは始終キスしていた)

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

ドローンを使った印象的なシーンから映画はスタート。
鳥瞰の引きのショットで徐々に地上へ近づいていくと、
老人が若い女の子を引きずっているっていう…
この時点でろくでもなく楽しそうな出来事が待っているんだろうな、
と期待を抱かせてくれます。
主人公は若者3人組。その1人の親が警備会社に勤めていて、
親が思っている他人の部屋の鍵を拝借して、
足のつかないレベルで強盗して金を稼いでる若者達。
彼らが住んでいるのはデトロイトというのが、
本作を特別なものにしていると思います。
デトロイトは自動車産業の衰退が主な原因で、
街がどんどん荒廃していて廃墟もたくさん発生している街。
近年、映画で使われることが多く、
僕が覚えている範囲だとイット・フォローズロスト・リバー
ドキュメントだけどシュガーマンとか。
絶望感が街から伝わってくるし、
一度発展した街が死んでいる様が本作と相性バッチリ。
主人公達は娘を交通事故で殺された盲目のイラク帰還兵の家へ、
強盗に入る計画を立てて実行に移します。
その帰還兵には示談金として多額の現金が支払われたから。
しかも彼の住む家の周りは廃墟だらけで余裕〜
と思いながら金を探し始めるんですが、
この兵士 a.k.a 盲目オジさんがとんでもなかったんですなぁ。。
まず、家に侵入したときのシーンが素晴らしくて、
オジさんが寝ている部屋に辿り着くまで、
1回もカットを割らずに描かれていました。
まるで自分もそこでいるかのような感覚になるんですが、
さらに凄かったのは2階への移動。
階段を移動する様子を追いかけるのではなく、
おそらくドローンで一気にカメラを2階へと移動させるんですね。
冒頭のシーン然り、ドローンの使い方が巧みでした。
クリーピーでも上手く使われていましたし、
人ならざるものの視点という意味で、
ホラーと相性が良いのかもなーと思いました。
家への侵入がオジさんにバレてからが地獄絵図。
目が見えないんだけど家の中を熟知しているので、
主人公たちが追い詰められていく様子が
めちゃめちゃハラハラするんですね。
タイトルになっているドント・ブリーズ、
息をするな、ってことなんですが、
盲目なので音に非常に敏感。
息使いで居場所を特定して
襲ってくるんですねーそれが超怖い!!
若者たちはなんとかエスケープしようと模索するんですが、
観客が想像し得ることはオジさんが
全部シャットダウンしてくので、
見ている側も追い込まれる気持ちになりました。
目が見えないけど音に敏感、
という設定をフル活用した怖い展開を
テンポよく矢継ぎ早に提供してくるので息つく暇もない。
とくに怖かったしオモシロかったのは電気消しシークエンス。
盲目のオジさんにとっては365日24時間停電状態な訳ですが、
主人公たちは真っ暗な中で彷徨う。
見えない中でのエンカウントっぷりがたまらなかったです!
しかも、オジさんは物語が進むに連れて、
銃を撃つことに一切の躊躇を見せなくなるので、
どうなっちゃうの?!という気持ちがマシマシでした。
あとオジさんの償いの考え方が
めちゃくちゃラディカルで恐ろしかったです。
新幹線で橋口亮輔監督のハッシュを見ていたんですが、
本作と全く同じ設定、つまりはスポイトによる受精を描いていて、
そこがシンクロしたことに個人的にとても驚きました。
(全然意味合いが違うけど)
「これで助かる…」という場面を用意して、
そこから突き落とすという場面が繰り返されるので、
息つく暇もなくてあっという間でした。
とてもミニマルな設定でこれだけオモシロいものが作れるのは、
映画ならではだなーと思いました。
ラストの悲劇は終わらない演出もフレッシュで、
「おぉ〜怖っ!」という具合で好きでした。
今年の映画納めとして最高最高!

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