2016年12月11日日曜日

舞台

舞台

本屋で新刊を見かけてそちらも超読みたい、
西加奈子さんですが過去作を読んでみました。
なぜ本作かといえば帯に、
「生きているだけで恥ずかしい。
自意識過剰な青年の馬鹿馬鹿しくも切ない魂のドラマ!」
興味が沸きまくること山の如し。
あらすじとしては有名作家のボンボンの息子が、
NYに1人旅をした際の旅行記といったものです。
それだけ聞くと何がオモロいねんという話ですが、
主人公の自意識があまりにも強くて、
登場人物がほぼ彼1人にも関わらず、
ページをめくる手が止まらない!
小説といっても推理、恋愛など、
いろんな種類がありますが
僕は人の自意識を巡る話が好きなんだなと
この1年読んだ中で改めて理解しました。
NY1人旅する29歳無職男子ってどんだけ呑気やねん
とはじめは思っていたんですが、
旅の序盤に絶望的な事件が起こってしまう。
そこから自分の自意識との格闘が始まります。
太宰の人間失格も引用しつつ、
今まで読んだ小説の中で自意識は最大風速 級。
朝井リョウの「何者」と近いところがあり、
とくに映画版での人は皆なにかを演じることで、
何者かであろうとする、社会は「舞台」なんだ
というテーマにかなりシンクロしていると思います。
NYで全財産を失った英語もろくにしゃべれない
日本人の地獄絵図が後半は展開されていきます。
領事館にすぐ行って助けてもらえればいいじゃん!
と思うんですが、彼はそれができない。
なぜなら、バカにされるんじゃないか、
NY来て調子乗ってんじゃねーよと思われたくないから。
とにかく人の目線が気になって笑われたくない、
既定路線、あるべき姿から外れることを嫌がるんですね。
主人公が好きな作家の名前が小紋扇子(コモンセンス)
というのもニクい設定というか、
コモンセンス(常識)と文学にすがりたい彼の姿が
痛ましくもあり、自分の姿にも重なってくる…
自分が近づけない父親への愛憎と憧れが
終始、彼の意識を巡り続けラストに
「地球の歩き方」で泣かされるなんて !
最初と最後に登場するダイナーの使い方もたまらなくて、
さんざん文句ぶーたれたダイナーの飯が死ぬほどウマい、
という価値の転換。ツッコミ社会は生きにくさもありながら、
ある程度恵まれてるから、そんな余裕があるのかなと思います。
自分のことを精一杯生きていきたいものです。
西加奈子作品は構成の巧みさは間違いないので、
テーマの選定が刺さればグッとくるなーと思います。
早く新作も読んでみたいところでございます。

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