2016年12月15日木曜日

かなわない

かなわない

本屋へ行く度に、とても惹かれる装丁だなぁと
思いつつもスルーしてきた中でやっと購入。
著者の植本一子さんは写真家なんですが、
僕はラッパーECDの奥さんという認識で読み始めました。
本作は働けECDというブログでの日記と、
いくつかのエッセイで構成されています。
エッセイもそれはそれはオモシロいのですが、
僕はブログで綴られる日記が好きでした。
とにかく「生活する」ことがいかに大変で豊かなのか、
そのことを知ることができる。
彼女の文章は暮らしのリリックそのもので、
最近よく聞いているZONE「生活日和」と
シンクロする部分が多分にありました。
「大変なことくらい知ってらぁ!」
と言いたくなるかもしれせんが、
植本さんの恐ろしいまでに正直な気持ちが
どうしたってこちらの胸を打ってくる。まさに「かなわない」
2011年の日記は放射能に関する言及が多く当時の空気を思い出すし、
旦那であるECDはアクティビストで社会問題に敏感なのに対して、
彼に安易に乗っかるわけでもなく、
自分の考え、気持ちを整理している様がかっこいい。
ブログはほぼ育児日記の様相を呈しているんですが、
ここも恐ろしいほどに正直。いや正直過ぎる。
年が経つにつれて写真家、
ひいては1人の人間としての自我が強くなり、
子どもたちを育てること、ECDとの生活が嫌だ!離婚!
とはっきり書いている部分がありました。
間違ったことは頭ごなしに糾弾される世界で、
しんどいことをストレートに書くことって勇気がいりますよね。
ただ、その糾弾する人は当事者ではないことも多いと思うんですよ。
似たような状況の人からすれば
「自分だけじゃない」と安心することもあるんだろうなと。
それは相対的に自分の位置を確認するというよりも、
感覚の共有なんだと思います。
あと自分に自信を失って他者に依存し過ぎてしまう、
という終盤の話も勉強になりました。
あるべき家族の形を外側から定義しようとすることほど、
窮屈なことはないにも関わらず、
他人が干渉してきたり国が干渉してきたりする。
自由であることの尊さを学べた気がします。

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