2016年12月29日木曜日

寝相

寝相


死んでいないもので芥川賞を受賞した、
滝口悠生さんの作品ということで読みました。
受賞した頃のSession22で書評家の豊崎さんが
本作を激押ししていたので前から気になっていた作品。
いやー完全にぶっ飛ばされましたね。
最近ノンフィクションに傾倒しつつあって、
小説にイマイチ乗り切れてなかったんですが、
こんな語り口が許されるのか…!
という衝撃があったので過去作を
もっと読んでみたくなりました。
本作は寝相、わたしの小春日和、楽器
この3つの中篇で構成されています。
どの作品にも共通するのは人称の入り乱れ。
死んでいないものでもその手法で描かれていましたが、
かなりシームレスというか整理されていたのに対して、
本作は混沌としていました。
それが一番強烈なのが楽器でいちばん好きな話でした。
はじめは仲の良い男女4人組が埼玉に
遠足へ行くという日常系の話かと思いきや、
後半から見たことない世界へと唐突に連れて行かれる。
本の表紙がまさにそれで男女4人組が
ある家にたどり着き、その家の磁場(?)によって
4人それぞれが自分の世界へと没入していく。
それに加えて家の中で繰り広げられる
他人の家族の宴会の様子も同時に描かれています。
登場人物が10人くらいいて、
それぞれの視点を行き来するからクラクラする。
今年を象徴する言葉として"post-truth"がありますが、
まさに本作は事実の向こう側にリーチしていると思います。
それは主観の強さと不確かさの両方を
バランス良く描いているから。
自分にとって都合のいいことばかりを
鵜呑みにすることは良くないなーと思うし、
他人の気持ちを想像することは必要で大切なことだと感じました。
それを説教臭く言うわけではなく、
人によって聞こえ方が大きく異なる「音」を
媒介としているのがオモシロかったです。
次はタイトルが気になっている、
ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンスを読みたいです。

0 件のコメント: