2016年12月24日土曜日

MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間



<あらすじ>
1970年代後半の5年間、ミュージックシーンから
完全に姿を消したマイルス・デイビスは、
慢性の腰痛に悩まされ、ドラッグや鎮痛剤の影響から、
自宅で1人すさんだ生活を送っていた。
そんなマイルスのもとに音楽レポーター、
デイブ・ブレイデンが強引におしかけてきた。
それから2日間、2人は盗まれたマイルスの最新曲のテープを
取り戻すため思わぬ追跡劇に巻き込まれる。
映画.comより)

ドン・チードル演じる、
マイルス・デイビスが主人公の映画!
ということで随分前から宣伝されていましたが、
この年末にやっと公開されました。
ただのジャズミュージシャンの映画なら分かるんですが、
マイルス・デイビスの映画でこの仕上がりか…
とガッカリした印象です。
何を求めるかに寄ると思いますが、
僕はジャズプレイヤーとしてのマイルスに
もっとフォーカスして欲しかったです。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

本作はドン・チードルが監督、脚本、主演を務めており、
はっきり言ってワンマン映画です。
実在の登場人物を描く自伝要素を持った映画の場合、
どこを切り取るかが重要だと思っています。
本作ではマイルスが活動を休止していた5年間を
描いているんですが、菊地さん曰く、
この5年でマイルスが何をやっていたかは
明確になっていないということでした。
なので、ほぼドン・チードルの想像の世界。
それゆえ、街中で銃をぶっ放しながらの
カーチェイスシーンが映画冒頭で展開されます。
シャフト等の70年代〜80年代の
ブラックスプロイテーションを彷彿とさせるもので、
それ自体はテンションが上がりました。
このカーチェイスに至るまでが
映画のメインストーリーとなります。
作りとしては活動休止中のシークエンスと
回想を交互にシャッフルして描いていくんですが、
オモシロかったのは場面の転換。
単純にカットを切り替えるだけではなくて、
目で見て楽しいエフェクトが盛り沢山。
あとは映像の質のギャップも良くて、
回想のときはフィルム撮影で味があるタッチで、
現代のときはデジタルのパキッとした映像になっていました。
あとは音楽。本作ではマイルスの実際の音源を
使用しているので映画館で彼の音楽を
大きな音で聞けるというだけで映画として
かなりプラスになっていると感じました。
このようにルックとして楽しめる部分が多かったんですが、
お話の中身、組み立てがかなりお粗末でキツかった…
まず現代シークエンスでは、
マイルスの未公開音源のテープを巡って、
ドンパチが繰り広げられるんですが、
誰が何を欲しいのか?という
動機付けが弱いなーと思いました。
活動休止中なのでトランペットを吹くことはない、
それはしょうがないとしても、
ひたすらコカイン決めまくってるだけの
ヤバい人間にしか見えない訳です。
(実際、その側面もあったのでしょうが…)
一方の回想シーンはアルバムのジャケットにもなっている、
フランシス・テイラーとの関係を中心に描かれています。
ジャズメンとミューズの関係という点で言えば、
先日見たチェット・ベイカーの自伝映画である、
ブルーに生まれついてとどうしても比べてしまう。
そして比べたことで本作の雑さが気になるんですよねー
彼女との関係でもたらされたものが
見えにくいところが良くないのかなと思います。
事実に縛られて物語が作れないということではなく、
自分の想像の世界で作り上げて、
この組み立ての悪さは監督、脚本に問題があるんだと思います。
ただ、ドン・チードルが楽しげにマイルスを演じているので、
やっぱり相当嬉しかったんだろうなと。
その喜びが最大限に爆発するのが最後のシーン。
活動休止から復活するコンサートという設定なんですが、
そのバンド編成のメンツが最強でカッコ良過ぎた!
本作の音楽監修を務めたRobert Glasperはピアノ、
ギターはGary Clark, Jr. キーボードにHerbie Hancock御大!
さらにレジェンド枠でサックスのWayne Shorter、
ドラムはバードマンでも有名なAntonio Sanchez、
ベースは紅一点のEsperanza Spaulding。
2015年に結成できる夢のオールスターセッション。
これが最後にあったのでギリギリ救われました。
vimeoにアップロードされていたので、
映画見なくてもいいからコレは見て欲しい!


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