2016年12月20日火曜日

アズミハルコは行方不明



<あらすじ>
日本中どこにでもありそうな郊外のある街。
この街から独身OLの安曇春子(アズミハルコ)が突然姿を消した。
街じゅうに貼られたハルコの行方不明ポスターとともに、
彼女のポスターをモチーフにしたグラフィティアートが拡散されていく。
ネットでは、男だけを無差別に襲う女子高生ギャング団と
ハルコポスターのグラフィティアートとの関係性が噂されはじめて…
失踪前と失踪後、ふたつの時間軸を交錯させながら、
現代女子の生きざまを描き出す。
映画.comより)

山内マリコさんの原作は発売当時に読んで、
映画化が発表されて蒼井優のステンシルの
メインビジュアルが発表されて、
それがかっこよかったので楽しみにしていました。
全体としてどうなのかと言われると、
若干詰め込みすぎかなーと思いながらも、
ポイントポイントで見所があって楽しかったです。
男子は本作を見て襟を正さねばならぬかもですね。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

冒頭で展開されるのは本作のキーとなるシーンから。
結果的に作品内で見せ方を変えつつ3回も流れるんですが、
繰り返したくなる気持ちも分かる美しいシーン。
とにかく蒼井優演じるアズミハルコがフォトジェニック!
今、あんなにセクシーかつアンニュイに
タバコを吸える日本の女優は彼女しかいない気がします。
このような印象的なショットがいくつかありつつも、
舞台は日本のTHE 地方都市であり、
地に足のついた地方社会物語として描かれています。
僕がフレッシュだなと思うのは本作が持つ軽やかさ。
日本の地方都市を描く場合には閉塞したものが比較的多い中で、
そこを打破していこうとしていく若者たちの姿が眩しい。
地方創生とか一億総活躍とか口では言うけど、
具体的なことが何も変わらない今の日本社会において、
一番分かりやすいのが「地方」と「女性」なのかなと。
打破の要素を構成するのが、
グラフィティとバイオレントな女子高生というのが
とても好きでしたねー
バンクシーのExit Through The Gift Shopに影響された、
若者たちが行方不明となったアズミハルコの
ステンシルを街にボムしまくって、
街、社会へと侵入していくのがカッコイイ!
(Obeyのアンドレ→ジャイアント馬場の流れが最高)
街にボムすることは犯罪なので
なかなか直接見ることはできないですが、
映画内でこれだけ景気良く見せてくれるとアガる!
あとは女子高生によるバイオレンス。
血が出たりのゴア描写は控えめなんだけど、
男たちをボコボコにする感じがたまらなかったです。
男がボコボコにされる理由は
作品内の男たちが女性のことを客体化しているから。
一番露骨なのがハルコの働く会社ですよね。
女性を完全にものとして見ていない、
「フランス」という名前だけで権威に平伏すクズ野郎たち。
こういった価値観を持った人たちはある一定の年齢層に
極端に集中していると肌感覚レベルで感じていて、
今、20代とか30代の人が社会の中心になったときに、
大きく変わるのかも。。。といつも思います。
ただ、大賀演じるユキオが女子高生の肌について
「弾くぜぇ〜」と言うシーンは好きでした。言い方が最高。
もう1人の客体化の対象が高畑充希演じる愛菜。
人肌恋しい寂しくて死んじゃうウサギ系ギャルなんですが、
男たちに裏切られ続けてしまう。
女子高生が直接的に男たちに復讐するのに対して、
年を重ねた女性たちは手をくだすことはない。
劇中のセリフにもあるように、
「優雅な生活が最高の復讐である 」として、
自分が幸せになることを最優先に考えようとするんですね。
結果として辛いことから逃げることになるかもだけど、
それでもいいじゃん、自分が幸せなら。
という2つの女性像の対比が見事だなーと思いました。
時間軸をシャッフルするのもハルコと愛菜を
分離させずに表裏一体のキャラとして見せる仕掛けとして
僕は上手く機能していると思います。
内容にいたく共感している中、
終盤の展開が相当もたついているのが残念でした 。
描き切りたい気持ちは伝わってくるんですが…
松井大悟監督の作品は初めて見たので、
他の作品も見てみたいなーと思います。

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