2016年9月1日木曜日

死んでいないもの

死んでいない者


第154回芥川賞受賞作品。
受賞した際にすぐ読もうと思っていたんですが、
すっかり忘れてしまっていました。
滝口 悠生さんの作品を読むのは初めて。
過去の作品がどういうものなのかは分かりませんが、
不思議な語り口の小説で楽しかったです。
過去作のジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンスと
寝相を早く読みたい!
葬式に集まった多くの親戚を描いた作品で、
「たゆたう」という言葉が
これほどふさわしい作品はないと思います。
それこそエマニュエル・ルベツキが
バードマンで見せたワンショットの美しさを彷彿とさせる。
それは人称が固定されていない小説の構成と
死者がこの世に残り自分を弔う人たちを
観察しているように思える設定によるものでしょう。
ある人の視点で語られ始めたかと思えば、
するりとそこから抜けて他の時間、場所へ移動し、
他の人の視点で語り始めたり。
明確に亡くなった祖父の視点とも言い切れない、
生と死の境目が極めて曖昧な世界観が
はじめは混乱するけれど徐々にクセになってくる、
後効きなグッドなシットだと感じました。©GEEKのOKI
おそらく本作を語る際に必ず言われているだろう、
死んでいないもの(living)、死んで「いない」もの(dead)
というタイトルのギミックからも
滝口さんの意図はビシビシ伝わってきますよね。
日本の葬式って特殊だなーと考えていて、
宗教(仏教)を日常で意識することはほとんどないのに、
死んだときには仏教の作法に忠実に従うのって、
一体何なんだろうと疑問に思ってしまう。
そんな面倒くさい自意識と本作は離れていて、
登場人物たちの日常のことが多く語られています。
葬式だからといって悲しいことばかりとは限らなくて、
久しぶりに集まるからこそできる、
ゆるやかな繋がりを描いている点にグッときました。
(津村記久子さんの「婚礼、葬礼、その他」を思い出した)
それを象徴するような、登場人物の1人である
ダニエルの言葉で締めたいと思います。
悲しみは悲しみとして、お祭りなんだよ

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