2016年9月12日月曜日

最後の命

最後の命 (講談社文庫)

中村文則作品。
2010年に文庫化されているんですが、
買い逃していてやっと読むことができました。
倫理的にかなり突っ込んだ内容なので
万人におすすめできないけれど、
僕はとても好きな作品でした。
普段から本を読むことでしか味わえないことが、
必ずあると思っているんですが、
その1つに普段深く考えないことに
否が応でも直面させられる点があると思います。
本作では幼い頃に知的障害を持つ女性に対する、
集団強姦という恐ろしい場面に遭遇した、
2人の主人公がそれぞれ別の道を辿りながら、
「生」と「性」についてどのように向き合うのか?
というテーマでサスペンスを交えて描いています。
脊髄反射で酷いもの、汚いものを拒否する人は
世の中に一定数いると思うんですけど、
嫌だ!と思考停止するのではなく、
「悪めいたもの」の存在理由を考えることが
大事だと思うんですよね。
読んでると辛くなるというか、
性犯罪は当然許されるような行為じゃないですし、
「男の衝動だから …」みたいなくだらない言い訳でもない。
外的要因と内的要因の狭間から生まれる、
アンコントロールな負の感情とでもいいましょうか。
安易な二元論に逃げない中村さんが、
物語にかける祈りにも似た強い思いを感じました。
「何もかも憂鬱な夜に」が好きな人は好きだと思います。
映画化されているそうなので、そっちもチェックせねば。

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