2016年9月24日土曜日

謝るなら、いつでもおいで

謝るなら、いつでもおいで

ここ数年友人と良かった本について語り合う、
というささやかな飲み会をしてるんですが、
そのときに教えてもらった 作品。
著者の川名壮志さんは毎日新聞の新聞記者で、
彼の上司である毎日新聞の佐世保支局長の娘さんが、
同級生に小学校で殺害された、
という事件を追ったノンフィクションです。
当時ニュースで見た記憶はあったんですが、
改めて大人になって知ると驚くことばかりでした。
青少年犯罪が報道される際、
マスコミでは犯行の動機を似非プロファイリングして、
「心の闇が〜」という紋切型の報道を多く見かけます。
この事件は加害者が小学生なので、
少年法の適用外であり「逮捕」ではなく
「保護」の形を 取っているため、
犯行の実態、動機解明が難しい中、
実態はそこまで単純ではないということを、
丁寧に取材を重ねて描かれていました。
僕が本作がノンフィクションとして優れている点は
時間の扱い方だと思います。
前半は自分も事件を見ているかのような、
海外ドラマの24を彷彿とさせるリアルタイム進行で、
事件を追っていく過程がとてもスリリング。
著者自身も記者として駆け出しだったこともあり、
事件という濁流に巻き込まれていく筆致は
読者も嫌が応でも引きずり込まれてしまう。
後半は事件から時間が経過したあとに、
被害者の父、兄と加害者の父 へのインタビュー。
当事者ではない世間にとって事件は報道されなくなったと
同時に記憶の彼方へと消えていく。
しかし、被害者、加害者は起こった事件と
一生向き合い続けて生きていかねばならないことを、
3人のインタビューから克明に浮き彫りにしていく。
とにかく経過した時間の「重み」が強烈で …
前半に下世話な気持ち全開で、
興味の赴くまま事件をむさぼっていた自分が
強烈に恥ずかしくなってしまいました 。
今や事件が起これば、被害者、加害者を含めた当事者の情報は
インターネットで遠慮なく平気で拡散していく世界。
その情報を見て訳知り顔するのは最悪だと思います。
一方で事件の全貌を知ることも実質的に不可能。
知ることと知らないことへの分別をつけて、
自分なりに考えることしかできないのかなーと
本作を読んでボンヤリと思いました。

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