Aで若干の消化不良を起こしていたので、
最新作ということで楽しみにしていました。
僕は去年の冬、きみと別れにおいて、
中村さんのミステリーを語るスキルの高さを知りましたが、
本作はさらにその先を提示した傑作だと思います。
学術的であると言っていい現実の話と、
複雑に計算された物語が有機的に絡み合うことで、
今までに読んだことのないような読後感を味わいました。
現実の話の点において今回フォーカスが当たっているのは、
心理学とくにマインドコントロール、洗脳といった話。
小説にこういった現実の話を取り込むこと自体は、
手法として超新しいというわけではないと思います。
ただ推理小説の中に実在した犯罪者の話を書きつつ、
そのプロファイリングまでも行ってしまう、
中村さんの「どこまでいくねん!」感が読んでて
めちゃめちゃオモシロかったです。
心理学の本を率先して読むかと言われれば、
なかなか難しいところですが、
こういう風に物語内に組み込まれれると
俄然興味を持ってしまいます。
そして、本作がぶっちぎりで凄いのは物語の構造。
冒頭のツカミの部分から嫌〜な感じ満載で、
自分が一体誰なのか分からなくなっている主人公と、
その主人公がいるコテージに置かれた手記。
この2つが大きな鍵を握っていて、
中盤あたりまでは物語に没入するんですが、
主人公と手記の間の違和感に気づき、
全く想像していない方向へと転がっていく瞬間が
めちゃめちゃスリリングだし、
「こんな悪夢みたいなことよく思いつくな〜」と。
しかも前半の部分を読んでいる読者が、
作中で洗脳される人と同じ過程をなぞってしまう、
鬼畜っぷりにゾクゾクしました。
中村さんの作品を読んでいつも思うのは独特の不可避感。
あらかじめすべての事態がこうなるようになっていのか、
と読者が思ってしまうほどに説得力が強いし、
その濁流に巻き込まれたくて読んでいる気がします。
これから1つ前の作品である、
「あなたが消えた夜に」を読みます。
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