2016年5月31日火曜日

ヒメアノ〜ル



<あらすじ>
平凡な毎日に焦りを感じながら、
ビルの清掃のパートタイマーとして働いている岡田は、
同僚の安藤から思いを寄せるカフェの店員ユカとの
恋のキューピッド役を頼まれる。
ユカが働くカフェで、高校時代に過酷ないじめに
遭っていた同級生の森田正一と再会する岡田だったが、
ユカから彼女が森田にストーキングをされている
事実を知らされる。
映画.comより)

森田剛が殺人鬼役?!ということで見てきました。
古谷実の原作も事前に読んで、
とても楽しみにしていたんですが、
これは…!な作品で最高でございました。
原作の設定や大まかな事態は残しつつ、
映画版オリジナルな部分も多く、
原作を読んでいても楽しめる作りになっていました。
とにかく森田剛!この一点突破です。
アイアムアヒーロー然り、
今年はバイオレンス系の邦画が豊作な年かもしれませんね。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

監督である吉田恵輔は大好きな監督の1人。
もともとコメディとか日常系は抜群で、
さんかくやばしゃ馬さんとビッグマウスはおすすめです。
前半はそんな彼の持ち味を発揮しまくりで、
濱田岳演じる岡田と会社の先輩でムロツヨシが演じる安藤が
1人の女の子(ユカ)を巡ってテンヤワンヤするラブストーリー。
後半は森田剛が本格的に登場し、
猟奇的殺人がしこたま繰り広げられるサスペンス。
極めてアンバランスなんだけど、
実際原作もこのバランスだし
そのギャップが笑っちゃう。
まず前半ですが、とにかく岡田と安藤の
しょうもないやり取りが延々続きます。
正直、ムロツヨシのあのしゃべり方は、
記号としてのオタクのデフォルメが強過ぎて、
はじめは苦手だったんですが、
コメディに振り切ったときは良かったです。
とくに岡田と安藤とユカの三角関係が
決定的になる公園のシーン。
絶叫の見事なカットバックの乱れ打ちは、
めちゃめちゃ笑いましたねー劇場も超盛り上がってました。
前半の段階で森田剛演じるシリアルキラー森田は
登場していて不穏な空気を醸し出しています。
岡田と森田は高校時代の同級生で、
森田は高校でひどいイジメに遭っていたことも示されます。
ユカを前から殺そうと狙っていた森田は、
彼氏になった岡田が邪魔でしょうがなくなり、
彼を殺すことを決意します。
この時点から後半に移っていくんですが、
やっと物語が始まったと言わんばかりに
タイトルやキャストのクレジットがここで登場!
予告編も似たような作りでしたが、
本編も全く同じ流れなのにはビックリしました。
まるで「お遊びはここまでだ」と森田が宣言したかのよう。
後半の始まりから殺人が加速度的に増えていく訳ですが、
最初に同級生でいじめっ子をともに殺した共犯の、
和草とその彼女を殺す場面があります。
森田が和草を殺すシーンと、
岡田がユカとセックスするシーンを
交互に展開していくんですが、
つまり森田には殺人欲なるものが存在し、
それは性欲と似たようなものってことを 画で見せてくれます。
シリアルキラーって本当に無動機だと乗りにくし、
かといって、心情を自ら吐露されることほど
冷めるものはないですよね。
原作では森田のこの心情が文字で書かれているんですが、
映画ならではの見せ方で素晴らしかったと思います。
(和草コンビがサイタマノラッパー1,2な配役なのもナイス!)
後半は森田の逃避行と躊躇なく人を殺すシーンが
矢継ぎ早に展開され完全なる森田剛無双!!
ジャニーズのタレントがここまでやれんのか、、
と漢気を感じざるを得ない展開の連続に息を呑みました。。
死体を前にマスターベーションしたり、
女性をレイプしようとして使用済み生理用品投げたり…
基本の武器は包丁なんですが、
その刺し方の狂気っぷりが全然笑えないレベル。
刺すシーンの見せ方がすごくて、
手持ちカメラでワチャワチャするシーンもありつつ、
カメラを引いた状態で刺しまくる様子を
モロに見せるというのも結構フレッシュでした。
引いた画のほうがエグ味が伝わってくるというね。。
原作と最も異なるのは森田と岡田の関係性です。
本作ではいわゆる「元友達」という扱いになっていて、
物語が収束する先も、その設定を生かしたものになっていました。
僕が疑問に思ったのは学生の回顧シークエンスで、
本人たちが学生役をそのまま演じていたこと。
さすがに厳しくないですか?30歳近くの人が学生役なの。
本人が学生役を演じることで、
森田のルサンチマンへの共感は増幅したんですけど違和感大。
森田の人間性をギリのところで残したのは、
吉田監督の優しさなんだろうなと思いました。
タレントの人が刺された事件が起こったりしましたが、
アイドルだろうが、シンガーソングライターだろうが、
そんな肩書きなんて関係なく危険は平等に存在することを
教えてくれる皮肉なタイムリー性を孕んでいるので、
森田剛の勇姿をスクリーンで拝むべし。

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