2016年5月21日土曜日

ヘイル、シーザー!



<あらすじ>
1950年代のハリウッド。あるメジャースタジオの命運を賭けた
超大作映画「ヘイル、シーザー!」の撮影中、
主演俳優で世界的大スターのウィットロックが
何者かに誘拐されてしまう。撮影スタジオは混乱し、
事態の収拾を任された何でも屋が、
セクシー若手女優やミュージカルスター、
演技がヘタなアクション俳優ら個性あふれる俳優たちを巻き込み、
事件解決に向けて動いていく。
映画.comより)

コーエン兄弟監督最新作ということで見ました。
前作のインサイド・ルーウィン・デイビスが
とてもオモシロかったので期待してました。
本作は良い意味でいえば読み解きがいがある、
悪い意味でいえば分りにくい、コーエン兄弟っぽい作品。
僕は1回見ただけだと全部咀嚼しきれていないと感じました。
映画にまつわる話なので、映画好きにはオススメしたいです。
僕が見た回ではおじいさんが途中退場していましたが…

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

ジョシュ・ブローリンが主演で、
彼が演じるのは映画スタジオのプロデューサー。
様々な作品を自らがコントールしています。
そんな彼のスタジオでの仕事がメインプロットに据え、
試写室、事務所、撮影現場を訪れて、
作品の進捗状況をチェックする様子が描かれます。
前半の段階で彼の担当している複数の作品について、
結構な情報量が前置きなくブッ込まれるので、
そこに付いていくのが結構大変でしたし、
一応「誘拐」という起伏のありそうな展開があるんですが、
基本的に淡々と仕事する様子を描いているだけなので、
退屈と感じてしまうかもしれません。
本作が取り扱っているテーマが主に
宗教(キリスト教)、映画、資本主義(共産主義)の3つ。
まず宗教なんですが、この点は知識が無くて、
ルックの部分でしか理解しきれず…
キリスト像のショット、教会での懺悔から始まる点や、
タイトルとなっている、Hail, Caesal!は本作内で作られている
キリストを描いた作品という点が挙げられます。
僕が好きだったのは時代考証として、
カトリックやユダヤといった様々な人を呼んで、
「一番皆に受け入れられるキリスト像にしたい」
というジョシュのリクエストを皆で議論するシーン。
ここで描かれているのは公平公正なんて存在しないということ。
誰かにとって都合の良いことは誰かにとって都合が悪い、
当たり前といえば当たり前なんですが、
エンタメでも政治でもそれが共通理解されていない
状況を鑑みると、とてもオモシロいシーンだなと思いました。
上記内容も関わってきますが、
メインテーマとなるのが映画を作るということ。
映画に関する映画というメタ構造を生かしたタイトルから始まり、
それぞれ特色のある様々な現場を観れるのが楽しい。
僕が一番好きだったのはロデオ俳優のシークエンス。
はじめに馬を使ったとんでもないアクションを見せてから、
繊細な芝居を要求される現場へ移動してからが最高最高!
彼の大根っぷりは当然のことながら、
何よりもローレンス・ローレンツ監督ですよね。
何回やんねんっていうしつこいボケがたまんなかったな〜
このロデオ俳優は悲しい気持ちになるシーンもあって、
彼女と自らの映画を試写会で見るんですが、
感動的と本人は思っているシーンで、
会場では爆笑が巻き起こる。
彼が苦笑いするだけなんですが、
作り手の意図と観客が受け取るものは
必ずしも一致しないということを見せてくれます。
また、彼女との食事でスパゲッティを使った、
超くだらないシーンがあるんですが、
「これがホンマのスパゲッティ・ウエスタンや!」
というくだらなさも良かったです。(1)
主演のジョシュ・ブローリンの葛藤は心に刺さるもので、
彼はロッキードからリクルートされていて、
今よりも楽な生活で高給取りになれるけれど、
本当にそれでいいのかと悩んでしまう。
好きなものと 現実を天秤にかけて、
一体どちらを選択するのかという点は興味深かったです。
スカーレット・ヨハンソンのやさぐっぷりも笑えたんですが、
ジョナ・ヒルの使い方がもったいなかった。。。
そして21ジャンプストリートシリーズで、
そのジョナ・ヒルの相方であったチャニング・テイタムは
超美味しい役どころでした。
セーラー服でダンスを踊りまくるし、
共産主義への転がり方が超くだらない!
ここでドルフ・ラングレンが出ていた事実も驚愕。(2)
資本主義と共産主義というのも大きなテーマ。
ジョージ・クルーニー演じる俳優が
共産主義者に誘拐されてしまいます。
これが全くシリアスでないのが笑えるし、
なんならジョージは洗脳されて、
身代金の分け前を貰おうとまでする。
この共産主義者の面々は映画関係者で、
いかに彼らの作品がヒットしようが、
スタジオが儲かるだけで、俺らは搾取されている!
という思想がベースにあって。
これはエンターテイメントをメジャーでやることに
伴う積年の恨みなのかなーと穿ったりしました。
(スタジオ名はCapital Studio)
 共産主義者に脳を洗われたジョージが、
その浅〜い理論をジョシュにぶつけるところが良くて、
「映画でメシ食ってるテメエが
ゴチャゴチャ言ってんじゃねえ!」
と本気で往復ビンタするシーンが映画愛に満ちてて最高。
この後、ジョージが迫真の演技を
見せることからも分かるように、
システムに文句言う前に自分の役割を必死でこなすこと、
その大切さを説かれたような気がしました。
コーエン兄弟作品は未見の作品が多いので、
他にも色々見ていきたいと思います。

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