映画監督である鈴木則文氏のエッセイ集。
以前に東映ゲリラ戦記という作品を読み、
とてもオモシロかったので読んでみました。
東映ゲリラ戦記は作品の舞台裏が中心だったのに対して、
本作は鈴木監督の映画を含めた物事に対する
考え方が書かれていて、本作も興味深かったです。
70年〜80年代に様々な雑誌に掲載されていたエッセイを
章ごとにテーマ立てて再編集しているんですが、
彼やその周辺人物のパンチライナーっぷりが秀逸。
なかでも内田吐夢監督の
「感覚の爪を研ぎ、論理の牙を磨け」はたまらない!
映画は稼げてナンボという
商魂のたくましさを感じる文章があれば、
繊細な「戦後」に対するまなざしがあったり。
自らを「カツドウヤ」と呼び、映画作りはサービス業であると
気持ちが良いほど割り切っているのは、
名作「トラック野郎」を生み出した原点と
言えるかもしれません。
結局1作目しか見てないから、今年中に全部見たる!!
と本作を読んで決意を新たにしました。
最後に一番好きだった「にっぽんヤクザ映画論」から、
土曜日のレイトショーでなぜ映画を見るのか語っている、
一節を引用して締めたいと思います。
土曜日の夜といえば、日曜の休日を前にした
のびやかで楽しかるべき団欒の夜である。
その夜をー深夜映画でわずかに慰める人々。
日曜日の半分以上を寝なかった夜のために
泥のように眠る人々。
日曜日なんかどうでもいい人々。
貧しい木造のアパートの一室に、下宿に、
家族がひしめく小さな家に、繁栄の擬制から
こぼれ落ちてどうしようもない脱落感と孤独と、
何かふと叫び出したいようなうっ積 ……そして殺意!
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