2016年5月23日月曜日

下品こそ、この世の花

下品こそ、この世の花: 映画・堕落論 (単行本)



映画監督である鈴木則文氏のエッセイ集。
以前に東映ゲリラ戦記という作品を読み、
とてもオモシロかったので読んでみました。
東映ゲリラ戦記は作品の舞台裏が中心だったのに対して、
本作は鈴木監督の映画を含めた物事に対する
考え方が書かれていて、本作も興味深かったです。
70年〜80年代に様々な雑誌に掲載されていたエッセイを
章ごとにテーマ立てて再編集しているんですが、
彼やその周辺人物のパンチライナーっぷりが秀逸。
なかでも内田吐夢監督の
「感覚の爪を研ぎ、論理の牙を磨け」はたまらない!
映画は稼げてナンボという
商魂のたくましさを感じる文章があれば、
繊細な「戦後」に対するまなざしがあったり。
自らを「カツドウヤ」と呼び、映画作りはサービス業であると
気持ちが良いほど割り切っているのは、
名作「トラック野郎」を生み出した原点と
言えるかもしれません。
結局1作目しか見てないから、今年中に全部見たる!!
と本作を読んで決意を新たにしました。
最後に一番好きだった「にっぽんヤクザ映画論」から、
土曜日のレイトショーでなぜ映画を見るのか語っている、
一節を引用して締めたいと思います。

土曜日の夜といえば、日曜の休日を前にした
のびやかで楽しかるべき団欒の夜である。
その夜をー深夜映画でわずかに慰める人々。
日曜日の半分以上を寝なかった夜のために
泥のように眠る人々。
日曜日なんかどうでもいい人々。
貧しい木造のアパートの一室に、下宿に、
家族がひしめく小さな家に、繁栄の擬制から
こぼれ落ちてどうしようもない脱落感と孤独と、
何かふと叫び出したいようなうっ積 ……そして殺意!

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