2016年5月17日火曜日

カルテル・ランド



<あらすじ>
メキシコ、ミチョアカン州の小さな町の内科医ホセ・ミレレスは、
地域を苦しめる凶悪な麻薬カルテル「テンプル騎士団」に
対抗するべく、市民たちと蜂起する。
一方、コカイン通りとして知られるアリゾナ砂漠の
オルター・バレーでは、アメリカの退役軍人ティム・フォーリーが、
メキシコからの麻薬密輸を阻止する自警団
「アリゾナ国境偵察隊」を結成。
2つの組織は勢力を拡大していくが、
やがて麻薬組織との癒着や賄賂が横行するようになってしまう。
映画.comより)

メキシコ麻薬戦争ブーム到来か!
と言わんばかりに立て続けに関連作が
公開されている最近ですが、そのうちの1つ。
(こないだクレイジージャーニーというテレビでも
潜入レポが放送されていましたね。)
ハート・ロッカー、ゼロ・ダークサーティーの
キャスリン・ビグローが総指揮を務めた
ドキュメンタリーということで見てきました。
メキシコ麻薬カルテルのドキュメンタリーといえば、
皆殺しのバラッドがありましたが、
それよりも事態ははるかに複雑だし、
これはドキュメンタリーなのか?
と言いたくなるレベルの話、映像の数々に
頭がクラクラしました。
この問題がどうやって終結するのか、
そもそも終結しないかもだけど …
定期的に関連作を見ていきたく思いました。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

すげー悪そうな人たちのインタビューから始まり、
彼らが暗闇の中でもぞもぞ作業をしています。
そこで作られているのがメタンフェタミン。
彼らは化学を学んだアメリカ人親子から
製法を教えてもらって自分たちで
作ることができるようになったと
意気揚々とカメラに向かって語ります。
これはメキシコ麻薬カルテルも描いた
ブレイキング・バッドと似たような
シチュエーションということで度肝を抜かれました。
フィクションでも何でもなくて、
現実で起こった、起こっている話なんだと。
また彼らの化学物質を取り扱っているとは思えない、
まるで野外料理のような作り方もillness全開で最高。
本作はカルテル側の視点ではなく、
麻薬カルテルの被害者であるアメリカ、メキシコ両国の
それぞれの自警団について描いた作品です。
前半はいかに麻薬カルテルが残忍か、
そして、いかに市民が蜂起して自警団として
立ち向かっていったかを描いています。
アメリカ側はアリゾナ州の国境で
カルテルの斥候隊を駆逐しようと自警団が活動しています。
トランプが「万里の長城作ったるわ!」と言ってたり
先日見たボーダーラインでも国境付近での
緊迫した戦闘シーンが描かれていたとおり、
アメリカとメキシコの麻薬をつなぐパイプライン。
国境警備隊はいるものの、それだけではダメだと言い、
自らパトロールして何とか密輸を阻止しようとします。
正直、このアメリカのシークエンスは
大したことがないというか、
メキシコで起こっている過激な事態と比べれば、
牧歌的にさえ見えてしまう。。。
そのぐらいメキシコのシークエンスが強烈!
(という意味で良い比較対象にはなってるかも)
まず政府、警察はろくに機能していない状態で、
女性、子どもとか関係なく、
刃向かったやつは残虐な形でぶっ殺す、
それがメキシコ麻薬カルテルスタイル。
もはや自分たちで身を守るしかなくなった
市民は自警団を結成し、
カルテルに奪われた街を徐々に取り戻してきました。
その中心人物が自警団のリーダーである、
町医者のミレレスという人物。
この人は非常にカリスマ性があるというか、
人の心を掌握するのに長けているのが
よく伝わってきました。
本作がぶっちぎりで特別な作品であるのは、
果敢にカルテルと自警団が実際に戦っているところに
潜入しまくりな点です。リアルガチPOV!
カルテルの残酷行為は事後の結果として
写真やインタビュー等で提示されるんですが、
自警団に密着しているため、
彼らの行動は基本的に生の映像で迫力が凄まじい!
酒場で飲んでいたカルテルのメンバーを
捕まえるシーンがあるんですが、
編集なしの撮って出しゆえの生々しさ!
自分自身や家族が被害に遭っているんだから、
ボコボコにするのは当然なんですが、
暴力 vs 暴力の不毛さが徐々に漂い始める後半。
ミレレスが飛行機事故で大怪我してしまい、
リーダー不在の自警団は徐々に空中分解し始めます。
もともとはカルテルから市民を守ることを
大義としていたんですが、
自分たちの暴力に陶酔するかのごとく、
その行使先が一般市民に向けられてしまいます。
濡れ衣着せられて、拉致られて、
「てめぇカルテルの人間じゃねーの?!!」と
因縁を延々つけられるという地獄。
あれ?自警団とカルテルの違いって …?
となってからは、もう何が本当で何が嘘か分からない、
人間同士の駆け引きが繰り広げられます。
証言ベースで証拠がないから完全に都市伝説の部類。
結局のところ、こないだ見たシビルウォーと
同じような展開になるのが、
オモシロいなーと思っていたのも束の間、
ラストにボムが仕込まれていました。
ビグロー節というべきか、何も解決してないし、
何が問題なのか分からなくなる悪夢。
ミイラ取りがミイラになるとはこのこと。
貴重な映像になると思うので
大きなスクリーンで見た方がいいかもね!

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