2017年2月1日水曜日

ネオン・デーモン



<あらすじ>
トップモデルを夢見て故郷の田舎町から
ロサンゼルスに上京してきた16歳のジェシー。
人を惹きつけるを持つ彼女は、
すぐに一流デザイナーや有名カメラマンの目に留まり、
順調なキャリアを歩みはじめる。
ライバルたちは嫉妬心から
彼女を引きずりおろそうとするが、
ジェシーもまた自身の中に眠っていた
異常なまでの野心に目覚めていく。
映画.comより)

ニコラス・ウィンディング・レフン監督最新作。
前作のオンリー・ゴッドが正直、
僕には理解の及ばない領域の映画でした。
それで今回もメインビジュアルを見たときに、
大丈夫かな…と勝手な心配をしていたんですが、
完全に杞憂でした!マジで最高最高!
オンリー・ゴッドがあったからこそ、
レフン監督が新たな領域に到達したと言える作品かと思います。

※ここから盛大にネタバレして書きます。

最初にタイトルが 出るんですが、
フォントの感じからしてたまんないわけで、
そっから主演エル・ファニングが演じるジェシーの
ショッキングなシーンから映画は始まります。
このバキバキにキメまくったショットと、
撮っているカメラマンの顔よ!
良からぬことが起こるだろうという
気配が漂っていてツカミはばっちり。
あらすじにもあるように本作は
女性モデルの世界を描いた作品です。
前半は田舎出身の少女がモデルの世界に
飛び込むことの苦労を描いていきます。
最初にとんでもない顔をしていた
カメラマンの男の子はどちらかといえば彼女の味方で、
丘でデートするシーンが超甘酸っぱくて好きでした。
あとジェシーが泊まっている
モーテル内での物語もとてもオモシロかったです。
キアヌ・リーブスをモーテルの管理人に使うという、
大胆なキャスティング。
美女、ヤバい管理人、モーテルといえば
どうしたってヒッチコックのサイコを想起しますが、
斜め上の展開連続で楽しかったなー
まさかの山猫の登場も然り、
夢オチからのキアヌの恐ろしさ然り。
オンリー・ゴッドのときに何が乗れなかったといえば、
ストーリーの推進力が少なかったことがあります。
それは研ぎ澄まされているという言い方もできるんですが、
あまりにビジュアルで引っ張り過ぎたのかなと。
そして本作は僕が感じた物足りなさを
分かりやすい物語で補完してくれていました。
物語と映像のかっこよさが有機的に結びつき、
最高のハーモニーを奏でていると感じました。
テーマは女性の若さと美しさ。
レフン監督の最新作で女性がメインとなるのは、
初めてかと思います。
ただ女性が主人公ではあるものの、
その若さ/美しさを消費/客体化する男側の視点で
描かれている部分があるので
男性こそ本作を見るべきだと思います。
日本だと「アイドル」という形式で、
大人が年端もいかない女の子を愛でる文化がありますが、
それが何を助長するのかということを本作は示唆しています。
象徴的なのがファッションショーのオーディション。
あのデザイナーのリアクションがすべてを物語っていました。
そして、ファッションショーで満たされていく、
ジェシーの承認願望の描き方が斬新で超かっこいい!
満たされた後の変貌ぶりはさながら超サイヤ人3で、
ギャグか!と言いたくなる思い切りの良さがたまらなかったです。
しかも、このジェシーをエル・ファニングが
演じているメタ構造がオモシロいですよね。
彼女を説明するファクターとして、
若さと美しさが大きな割合を占める訳ですから。
終盤は破滅への階段を徐々に登っていくジェシー。
それを助長するのがジェナ・マローン演じるルビーで、
彼女も相当トバしていて良かったです。
(ロシアンマフィアみたいなタトゥーがいかす!)
単なるネクロフェリアという描写にとどまらずに、
ネクストレベルに行っていると思います。
アデル、ブルーは熱い色ばりの衝撃。。。
若さと美しさがすり減っていくことに
耐えきれない大人たちによる憂さ晴らしの結果が
主張としてはかなりシニカルなんだけど、
スクリーン上で展開されるシーンは派手
というギャップが好きでした。
年相応に生きたいと思うと同時に、
自己肯定の必要性も感じました。
(レフン監督曰くナルシズムの祝福)
他人の畑が青いからってそこへ侵食していっても
ろくなことはないんだよという話は
様々なことが可視化されている現代にぴったりでしょう。
レフン監督のフィルモグラフィーの中で、
僕は現状一番好きな作品です!

0 件のコメント: