2017年2月4日土曜日

タンジェリン



<あらすじ>
クリスマスイブのロサンゼルス。

トランスジェンダーの娼婦シン・ディは
恋人が浮気していることを知って怒り狂い、
浮気相手を見つけ出して懲らしめるべく奔走する。
シン・ディの親友で歌手志望のアレクサンドラは、
カフェでのライブを目前に控えていた。
一方、アルメニア移民のタクシー運転手ラズミックは、
自らの変態的な欲望を満たそうとしていて…
(映画.comより)

全編iPhoneで撮影した映画!

ということで話題になっていたので見てみました。
iPhoneで撮る意味がしっかり存在する、
LAアウトサイダーズの日常が見れて楽しかったです。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。


主人公はシンディ、アレクサンドラという

トランスジェンダーの2人が
ドーナツショプで駄弁っているシーンから始まります。
ほぼ前知識無しで見に行ったので、
何だ、何だー!と思わざるを得ませんでした。
ツカミはバッチリ。
iPhone5sにアナモルフィックレンズを付けることで、
ワイドに撮られているためルックは映画然としていて
全然安っぽくない仕上がり。
言われなければ分からないと思います。
どうしようもないけど愛さずにはいられない、
アウトサイダーズの日常。
それをiPhoneのようなラフな画質で撮る、
物語と映像が呼応する素晴らしい形だと思います。
あらすじにあるシンディの浮気と
変わった性癖を持ったラズミックの話が
二本立てでパラレルに進んでいくんですが、
画面に映るLAは外様の人間が
イメージするものと異なり、
ギャングスタではないダーティー感があって興味深かったです。
タイトルにもなっているタンジェリン。
これはオレンジの名前である訳ですが、
全体に橙な色調が非常に特徴的。
とくに夕暮れの色合いがとても美しかったです。
その美しさと起こっていること自体のしょうもなさ、
このギャップがグッとくるところでした。
当然、ハイグレードなカメラで撮った映像の方が、
見た目はリッチになるわけですが、
映画のオモシロさは1つ1つのショットと
編集、物語のプロットによるんだなーと感じました。
編集の点ではテンポの良さが素晴らしくて、
とくにシンディが彼氏の浮気相手の女を
街中を連れ回すという、どうしようもない展開と
相性が良かったと思います。
ショットの点ではアレクサンドラが
バーで歌う シーンのクローズアップショットは
際立つ孤独感がとてもかっこ良くて好きでした。
後半にかけてラズミックとシンディ、アレクサンドラの
ストーリーが交わっていきます。
ラズミックの変わった性癖がなかなかの衝撃で、
観客が想像する斜め上を超えてくるし、
「テメエついてねぇじゃねーか!」は笑いました。
そして、超カッコイイのがカーウォッシュのシーン。
車がカーウォッシュの機械の中へ入っていき、
そこでブロージョブが行われる訳ですが、
後部座席から撮ったカーウォッシュの様子は
現代アートの様相さえ呈していました。
そして完全に物語がクロスする終盤。
それぞれの矢印が無限に交錯する、
あのワチャワチャ感が最高最高だった!
そのままおもちゃ箱をひっくり返した形で
終わるかと思いきや、コインランドリーでの
しっとりした情緒のあるラストがまたグッとくる。
次作はうって変わって35mmで撮っているみたいなので、
そちらの作品も楽しみなところです。(1)

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