2017年2月22日水曜日

たかが世界の終わり




<あらすじ>
若手作家のルイは自分がもうすぐ死ぬことを知らせるため、
長らく疎遠にしていた母や兄夫婦、
妹が暮らす故郷へ帰ってくる。
しかし家族と他愛のない会話を交わすうちに、
告白するタイミングを失ってしまい…
映画.comより)

グサヴィエ・ドラン監督最新作。

カンヌでグランプリ取った作品ということで
楽しみにしていました。
今回もセンス炸裂しまくりで、
言ってしまえば単なる帰省なのに、
ここまで世界が拡張できることに驚きまくり。
クールさとエモーショナルが同居する、
かっこいい作品でした。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

主人公ルイのモノローグから始まるんですが、
かなり唐突な入り方をしていて、
見終わってから冒頭にそこそこ重要な
情報詰まってたなーと思いました。
(なので、これから見る人は要注目)
過去の作品はかなりエッジの立った人物を
主人公に据えていたので、
人物の背景説明を端折っていても
割とすぐに理解できたんですが、
本作は「普通」のフランスの一家族の話なので、
登場人物たちがどういった人物なのかを
把握するまでに少し時間がかかるかと思います。
と同時に物語の普遍性が増しているので、
フランスの話とはいえ身につまされること山のごとし。
家族の結束は強くあるべし!みたいな
価値観を押し付けてくるの最悪だと思っているんですが、
本作はリアリスティックというか、
日本でもお盆/年末年始にそこかしこで
繰り広げられているだろう風景が描かれています。
ちょっとしたことで喧嘩になるし、
家族ゆえに遠慮がないから、それぞれの主義主張が
これでもかと開けっぴろげに語られる。
勝手に家を出て行った弟に怒りを感じている兄、
息子の帰還をただただ喜ぶ母、
彼と生まれて始めて会う妹と義姉。
なごやかな瞬間と一触即発の瞬間が
シームレスに流れていく展開がとてもスリリングでした。
それは脚本として優れている部分も当然あると思いますが、
なんといってもカットの見せ方による効果が最も大きいでしょう。
ひたすらカットバックで会話劇を見せることで、
同じ会話でもテンポがとても早く感じる。
さらに、それぞれのショットが話を聞いている人の
肩越しからのショットで顔にクローズアップしているので、
スクリーン全体から圧迫感も感じました。
この圧迫感は抑圧的な家族関係を象徴していると思います。
またMommyや私のロランスで見せたMV手法も健在。
まさかのO-Zoneの恋のマイアヒ使いには心底驚いたし、
リビングのラジオで流れて母娘が踊り始めてから、
回想シーンへと流れていくところの音量のバランスが
とても見事で否が応でもアガっちゃう仕掛けになってました。
原作が演劇ということもあるのか、
ここまで述べて来たような映画だからできることを
かなり意識していると感じます。
終盤のすべてが崩壊していくシーンでは、
ライティングがとても素晴らしい。
青を基調としたクールで重めな色から一転、
オレンジ色を貴重とした夕焼けを思わせる色へとシフト。
上手くいかない家族関係とのGAPが泣けてくるんですなぁ。
ただ過去作に比べるとカタルシスが少し弱いのかなと。
ゆえに煮え切らない気持ちを抱えたまま終わっていく。
観客が自分の家族について考えさせるために、
意図的にしたのかなと思ったりしました。
なんだかんだやっぱりすげーグサヴィエ・ドラン。

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