2017年2月25日土曜日

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う



<あらすじ>
ウォール街のエリート銀行員として出世コースに乗り、
富も地位も手にしたデイヴィスは、
高層タワーの上層階で空虚な数字と
向き合う日々を送っていた。
そんなある日、突然の事故で美しい妻が他界。
しかし、一滴の涙も流すことができず、
悲しみにすら無感覚に自分に気付いたデイヴィスは、
本当に妻のことを愛していたのかもわからなくなってしまう。
義父のある言葉をきっかけに、
身の回りのあらゆるものを破壊し、
自分の心の在り処を探し始めたデイヴィスは、
その過程で妻が残していたメモを見つけるが…
映画.comより)

ジャン=マルク・バレ監督最新作。
ダラスバイヤーズクラブを見てから、
公開されるたびに劇場で見ていますが、
今回はジェイク・ギレンホールが主演ということで、
かなり期待して見に行きました!僕はめちゃめちゃ好きでした。
喪失→破壊→再生の過程とその結末という物語の部分、
ルック、音楽どれもが素晴らしくてシビれまくり。
ジェイク・ギレンホール主演の映画は
間違いなくオモシロいという方程式どおりの映画。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

クラシックが流れる穏やかな車内で、
夫婦2人で他愛もないことを話しあっている空間が、
車事故によって破壊されてしまい、
映画始まって早々に主人公の奥さんは
亡くなってしまいます。
この大きな喪失をベースにして物語が進んでいきます。
最愛の奥さんを亡くしたのだから、
喪失感に襲われてオンオン泣くかと思いきや、
彼の表情から悲しみの気持ちは読み取れないし、
間髪入れずに仕事に復帰したりする。
その一方で病院にあったお菓子の自動販売機の
会社に対して手紙でクレームを入れ始める。
これが単なるクレームではなく、
身の上話を含めた内容になっていて、
行き場のない彼の感情を知るきっかけになっていました。
本作を見て思うのは、少しのきっかけ、
誰かの何気ない動きの1つで世界が変わるということ。
「あのとき、あの人があの行動を取らなければ…」
という偶然の積み重ねが今を作っていると思わされる。
それは観客側が想定する定石通りの展開よりも、
予想外の展開が多いことによるものなのなかと。
あまりに的外れなことだと、
「そんなわけない」というツッコミで一蹴されるんですが、
細かい部分で逆張りされると、
人生が選択の連続であることを痛感させられました。
この定石からの逸脱で最も特徴的なのが、
喪失→再生までの間に破壊(分解)が挟まれていることです。
自分が本当に妻を愛していたのか、
なぜ大きな喪失に対して何も感じないのか、
理解しようとするためには、
自分を分解(分析)しなければならない。
そこで物理的に様々なものを分解するっていう…
斬新すぎる!そしてこの分解が徐々に破壊へとシフトしていく。
圧巻なのはサクセスの象徴である家の破壊。
異様なカタルシスがあって、
ただただぶっ壊しているだけなのに
めちゃ笑ってしまったし、
破壊に対するリビドーを呼び覚まされる。
(あのブルドーザーのインパクトよ!)
クレームによって関係を持つことになった、
シングルマザーの家族は破壊と再生の狭間のような存在。
身内には言えないことも赤の他人であれば吐露できる
ってなんか分かる気がします。後腐れがないし。
ここで登場する子どもの存在が
本作をとても特別なものにしていると感じました。
過去作でも音楽が良かったけど、
本作はそこが頭1つ抜けた分、
より好きな映画だなーと思いました。
なんといってもFreeの「Mr.Big」という曲ですよね。
至高のドラムブレイク曲ですが、
この曲を聞きながらNYの街を
踊りながら歩くシーンの多幸感!
そして、この曲が好きになる過程が最高で、
子どもが曲に合わせてドラムを叩いて、
それが気に入って自分のiPodに入れてもらうっていう。
取っ替え引っ替えやってくる母親の恋人に辟易していて、
大人を信用できていなかったことが伺える訳ですが、
子どもと対等の目線に立つってこういうことだよなー
と思ったりしました。(あとFuckの適切な使い方)
終盤も予想外の展開の連続で、
簡単に全部丸く収まる訳ではないところに、
人生の普遍性を見た気がします。
邦題の青臭さがどうしても許せなかったんだけど、
ラストシーンを見たときに、
これはこれでいいかなーと見終わったときに感じました。
原題のDemolitionだと味気ないっちゃ味気ないし。
If it's rainy, You won't see me,
If it's sunny, You'll think of me.という言葉が
ラストシーンでハンパなき沁み方するので。。
いつか名画座で
西川美和監督の永い言い訳と二本立てして欲しい。

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