2016年11月6日日曜日

エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に



リチャード・リンクレイター監督が
1980年代の大学野球部を舞台に描いた青春群像劇。
大学野球部の仲間たちが、
新学期が始まるまでの3日間に織り成す人間模様を
懐かしの80'sサウンドに乗せて描き出す。
映画.comより)

リチャード・リンクレイター監督最新作。
前作の6才のボクが、大人になるまで
人生ベスト10に入る大好きな作品だったので、
今回も楽しみにしていました。
極めて過去作のバッド・チューニング的な世界でありながらも、
アップデートされている印象を持ちました。
今を生きる若者に見て欲しい作品。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

The KNACKの「My Sharona」が
車のカセットデッキから高らかに鳴り響き、
主人公である新入生のジェイクがレコードケースを抱え、
意気揚々と野球部の寮へやってくるところから物語は始まる。
車に乗っている彼の視点が女の子のお尻ばっかり
見ているというショットからして何をか言わんや、
イイ感じの下世話感が伝わって来てアガる。
6才〜比較的センシティブな若者像だったのに対して、
本作で描かれるのは体育会系のいわゆるジョックス。
寮に到着して本作の登場人物を初対面ということを活かして、
手際良くキャラ説明するのが上手いなぁと思いました。
ジェイクが到着したのは入学3日前で、
ここから野球部の面々と共に学校が始まるまで
ハメを外し倒すのを見守るという作りになっています。
その中心にあるのが80'sの音楽です。
先日紹介した西寺豪太さんの著書および、
タマフルへのゲスト出演において、
80'sとは何ぞやという話が深く解釈されていましたが、
本作はリンクレイターなりの80's解釈といってもいいと思います。
登場人物は野球部の部員で特別音楽にこだわりがあるのは、
一部の人間に限られていて享楽的に音楽を楽しむ人の方が多いんですね。
この設定があるので特定の音楽ジャンルに限られることなく、
ディスコ、ロック、カントリー、パンク、
そしてヒップホップとジャンルを横断した幅広い選曲が
可能になっていてオモシロかったです。
初日に先輩の車でフォックスという酒場まで、
車で移動する際に皆で大合唱する、
THE SUGARHILL GANGの"Rapper's Delight"がとにかく最高最高!
ディスコやライブハウス、カントリークラブ等で
とにかく音楽を楽しんでいる姿勢が眩しくて、
こんな風に無邪気に音楽を楽しむ心を忘れたくないなーと思いました。
一方で完全に体育会系のノリがずっと続くので、
端から見て笑うことはできるものの、
「こんなにイケてなかったなぁ大学生活」と思わずにはいられない。
そんな気持ちにさせてくれるのは俳優陣、
登場人物のキャラクターの豊かさに起因するのではと思います。
いわゆるハリウッド俳優は1人もいないんだけど、
キャラ立ちがハンパなくて皆濃いんですよね。
体育会ノリで常に勝ち負けを意識している様はオモシロいし、
強烈な同族意識も懐かしく感じました。
無茶苦茶やっている中でも、急に核心を付くようなセリフを
忍ばせてくるのでリンクレイターは好きなんですよね。
単純なジョックスのパーティー物語で終わらない。
全キャラクターがとても愛しいんですが、
僕が好きだったのはフィン。
彼は茶目っ気とメンターとしての矜持を持ち合わせた
理想の先輩像だなぁと思うんですよね。
(演劇部のダンスパーティー行く前のくだり爆笑した)
心が痛くなるのはマリファナ大好きなウィロビーの話。
いつまでも大人になりきれない僕みたいな人間には、
仲間たちが容赦なく笑いとばす声が
心に重くのしかかってしまった…
ウィロビーはTVドラマのトワイライト・ゾーンを
コレクトしている設定があるんですが、
ここに込められた意味がIMDBに書かれていて、
それまたグッとくる。。
名前がすでに暗示しているという話→リンク
野球部の話なのに野球のシーンが
かなり少ないのもかなり思い切った作りでしょう。
監督のインタビューでスポ根物語を描くつもりはなかった、
と言っていましたし、僕がなるほどなーと思ったのは、
「野球部でも世間と同じ比率でセンシティブな人はいる」
というジェイクが劇中で放つセリフでした。
リンクレイター節が炸裂するのは、
ジェイクが運命の恋人と関係を深めていく後半で、
これはビフォアシリーズから脈絡と続く十八番。
特に今回は甘酸濃度がかなり高め。
電話のシーンが特に好きだったなぁ。
いとうせいこうの我々の恋愛でも描かれていた、
むかしの恋愛への憧憬とでも言うべきか。
ラストシーンが彼らにとって
始まりのシーンになる訳ですが、
先生が黒板に書く言葉、そして居眠りする。
これぞCollege Lifeの始まり!と言いたくなる、
最高の終わり方!超眩しかった。
からのエンディングロールでの"Rapper's Delight"に
出演メンバーがライミングしていくところで完全にサムアップ!
6才〜以上に好き嫌い別れそうですが、
80's音楽と無限大の可能性を秘めた青春は
最高の組み合わせだなと思いました。
本作の続きはビフォアサンライズになる、
リンクレイターユニバース総決算の作品。

0 件のコメント: