2016年11月3日木曜日

コンカッション



<あらすじ>
ナイジェリアからやってきた医師ベネット・オマルは、
NFLを引退し、心筋梗塞で亡くなった
マイク・ウェブスターの変死解剖に携わる。
オマルはプレイ中の頭部への激しいタックルが
原因である脳の病気「CTE(慢性外傷性脳症)」を発見し、
論文を発表するが、NFLサイドはオマルの見解を全面否定。
権力を使い、オマルと彼の周囲に圧力をかけていく。
映画.comより)

映画館に行きたくなるような映画がないなぁ
と再び食傷的な気持ちを抱える中、
せっかくの祝日だしということで飛び込みました。
ウィル・スミス主演の実録医学サスペンス。
ウィル・スミスといえばスーサイド・スクアッドで
なかなかに残念な感じでしたが、
本作は人間のエゴイズムと科学の戦いが
めちゃくちゃオモシロかったです。

※ここからは盛大にネタバレして書きます。

冒頭、本作のキーマンとなるマイク・ウェブスターが
NFL殿堂入りした際のコメントのシーンから始まる。
栄光を掴んだ彼の姿をはじめに見せることで、
この後の目に余る彼の堕落していった姿が
余計に辛く感じる作りになっています。
主人公のオマルは監察医で検視が彼の仕事です。
非常に優れた頭脳を持っていることは、
法廷での経歴自慢から分かる。
また、頭がいいだけではなくクリスチャンであるため、
死体への敬意も忘れない人格者でもあります。
彼の手術が独特でメスは毎回使い捨てで、
解剖時はイヤホンをして音楽を聞いている。
この音楽のチョイスが渋くてTeddy Pendergrass!
実話ベースなので本当に彼が聞いていたのかもしれませんが、
ちょっとした音楽チョイスのセンスが
映画をグッと品の良いものにすると思います。
ウェブスターの解剖で脳に異常があって然るべきなのに、
CTや剖検では異常が見当たらない彼は、
病理検査を行うことに決めます。
通常の検視で病理検査まで行うことは稀、
なぜならお金も手間もかかるから。
しかし、彼は起こっている事象を客観的事実によって
明らかにするという科学に対する従順な気持ちから、
病理検査を行ったところ、ウェブスターの死因が
アメフトで行った激しいコンタクトによる、
脳へのダメージが原因だと突き止めます。
(Concussionは脳しんとうの意味
突き止めた瞬間までを描いたシーンの構成が見事!
テンポの良い展開とアメフトのコンタクト時の
脳へのダメージを可視化したシーンがかっこ良かったです。
あと、マイク・ウェブスターの堕落っぷりが、
前述した通り、かなりキツかった…
ホワイト・トラッシュそのもので
アンモニア吸引シーンが強烈だし、
その後、病院で助けを求める姿があるからこそ、
後半の展開に感情移入しやすくなっていました。
日本では野球やサッカーが人気で、
アメフトはそこまで知られていませんが、
アメリカでは野球、バスケと並ぶ人気スポーツ。
そのアメフトでのコンタクトによって
脳にダメージが蓄積されて病気になるかも…
と言われてしまうとアメフト側は超困りますよね。
アメフトの魅力の1つである激しいコンタクトを
全否定されるようなものなんですから。
中盤からNFLという巨大組織vs一介の監察医という
スリリングな展開になっていきます。
オマルは何にも間違ったことは言っていなくて、
人の命を救いたいという強い意志があるだけ。
一方で彼が提示した事実がNFLというスポーツの根幹、
ひいてはアメリカ全体を揺るがす。
そのぶつかり合いから、民主主義というシステムについて、
考えさせる作りになっているのがオモシロかったです。
要するに多少の犠牲は伴うかもしれないが、
よりたくさんの人が幸せになれるのだからしょうがない。
たとえそれが命だとしても。
どっちが悪いとは一概に言い切れないので、
観客側も答えを探しながら見るという
僕が好きなタイプの映画でした。
ただ僕は科学にbetしたくなる気持ちが強いし、
なぁなぁにしようとするところを
ヒドい人種差別を受けながらも科学を信じ抜く
オマルがかっこ良く見えました。
監督はピーター・ランデスマンという人で、
本作の前にケネディ暗殺を題材にした作品を撮っているので、
そっちも見てみようかなーと思います。

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