2016年11月30日水曜日

見えない音、聴こえない絵

見えない音、聴こえない絵

この秋に瀬戸内芸術祭へ行きまして、
そこで大竹伸朗さんの作品群をたくさん見て、
完全に虜になってしまいました。
先日、吉祥寺へ行った際にBASARA BOOKSで本作を発見し、
光の速さでサルベージして読みました。
本作はエッセイなんですが彼の芸術の源や
作品に対するスタンスを知ることができて、
とてもオモシロかったです。
以前に同じくエッセイである「既にそこにあるもの」
を読んでいるんですが、
僕は本作の方がより彼の本質を知ることができる気がしました。
彼の作品の何が好きかといえば、
ヒップホップを感じるところ。
それはコラージュという言葉に集約されるもので、
ヒップホップで言うところのサンプリング。
インスパイアということではなく、
既にそこにあるものをカット&ペースト、
ときにはそこに加工を施して
見たことのない景色を見せてくれるんだからたまらない。
0→1でものを作り出すことが偉いのである。
という言説がツッコミ過多の世界では跋扈する最近ですが、
果たしてそう言いきれるのか?
あと、作者の意図が絶対的な価値観として存在し、
そこから外れたものは「間違い」扱いされることは?
ということを疑問に思ったりするんですが、
これらに対する大竹さんの考えが、
心のもやもやをズバーッ!と晴らしてくれました。
芸術に対する哲学とも言える論考があったり、
日常と芸術の距離感の話があったり。
1つ1つのエッセイの中ではまるで大竹さんの
脳内を泳いでいるように話が横滑りしまくるんだけど、
彼の主張自体は一貫している。このかっこ良さに惚れる。
とくに彼がライフワークとしている
スクラップブックの話がとても好きでした。
30年近くひたすら切って貼ってを繰り返しているらしく、
皆がゴミと思って捨ててしまう印刷物に、
彼なりの美学を感じて集めているところが、
これまたヒップホップっぽいんだよなー
あと最近Vynl Memoriesというmixを作ったんですが、
それとシンクロするような「黒の盤景」というエッセイの中で、
彼曰く、個人的なレコードの思い出は
単なる極私的独白に陥りやすいと…
ですよねぇ!と読みながら首を縦に振りまくりました。
彼のもの作りへの衝動が自分の中で共振してしまう名著。

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